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可愛い一日

7月のある日、作家仲間で同い年の友人スーさんと楽しい午後を過ごした。
まず以前から気になっていた八幡食堂コレコウジツにランチに行こうということで、昼時だと混むと思い少し早めの11時に現地集合の予定だったのだが、当日「遅く起きた上に掃除やらなんやらしているうちに身支度が間に合わなくなる」というしょうもない理由で「ごめん、やっぱり12時でいいすか?」とスーさんにLINE。すると「そのほうが助かります!」と返信が来た。スーさんと遊ぶのはまだ2回目だけど、もうこの時点で彼女とはフィーリングが合うと思った。

11時には間に合わなかったが12時よりはだいぶ早く来てしまいつくづくタイミングの悪い私は先に店に入って待つことに。
店内を見回していると、レジ前には上野あづささん、奥の壁面には伊山桂さんの絵がそれぞれ飾ってある。ふたりの絵は見たらすぐにわかる。

portoponponeの真っ赤なリネンワンピースで待っていると窓から鮮やかな黄色いワンピースを着たスーさんがやってくるのが見えた。二人してビビットで明るい色のワンピースで来たことに思わず笑った。
その日会う相手によっては何を着ていくべきか悩むこともあるけど、相手がスーさんならここぞとばかりに好きな格好ができるぞと実は密かに思っていた。感性が合う人と過ごすのは一人で過ごすことと同等の自由がある。

ランチにはふたりともカレーを頼んだ。アボカド、ナス、ヤングコーン、レタス、なんてカラフルな野菜たっぷりの幸福なカレー。これなら¥1,400とランチには少し高めのお値段でもじゅうぶん満足だ。美味しい。最高。

ランチの後、BOOK NERDにスーさんが行ったことがないというので連れて行った。スーさんは岩手県出身だけど、実家は土澤なので盛岡に来てまだ日が浅い。ちょうどレトロで可愛い輸入雑貨のPOPUPをやっていて、はしゃぎながら見た。なんの動物かよくわからないぬいぐるみを見ていたら店主の早坂さんが「一応ネズミです」と教えてくれた。ネズミにしてはだいぶでかい。「(ミュータントタートルズ)のスプリンター先生になりかけのやつ」「そのうち紫の道着着るんでしょ」「それそれ」と盛り上がる。

川沿いを私のアパートに向かって歩く。佇まいがまるでジブリに出てきそうな喫茶店「ふかくさ」が美しい額紫陽花に彩られていて、よりいっそうジブリっぽくなっている。まるでアリエッティ(観てないけど)が隠れていそう。しかも二人ともジブリのヒロインみたいなワンピースを着ているではないか!ということで記念撮影。

まるでジブリみたいなふかくさ
まるでジブリっぽいふかくさの前に立つジブリっぽい服着たスーさん
まるでジブリっぽいふかくさの前に立つジブリっぽい服着た私

さらに歩いていくと、工房蟻が入っているビルの前でホームシックデザインの八重樫さんにばったり会った。
「かわいい服の人たちが歩いてくるな〜と思ったらシラトリーヌさんたちでした」
そういう八重樫さんもかわいい形の帽子をかぶっている。結局みんな可愛い。八重樫さんにスーさんを、スーさんに八重樫さんを紹介。またこうして素敵な人どうしが繋がって嬉しい。
私の着ていた服を見て「ここの服ですか?」と、八重樫さんが工房蟻を指して私に尋ねた。
たしかに、東京のportoponponeの服と風合いが似ている。似ているが、やはり違う。でもどちらも好き。まだ工房蟻の服は持っていないけど、いつかクローゼットに迎えたい。
3人で立ち話をしていると、2階の窓から誰かがこちらに向かって手を振った。八重樫さんとスーさんが手を振り返したので、なぜか私も一緒になって手を振ってしまった。
八重樫さんとわかれた後、
「窓から手を振ってた人、お知り合いなの?」
とスーさんに聞いてみると、
「いや、八重樫さんに向かって振ってたと思うんだけど、つい振り返しちゃった」
と言うので爆笑した。
「でも工房蟻には何度か行ってるし、実は会ったことある人かも」
本当にそうかもしれない。盛岡は狭い。そしてアートやファッションや音楽が好きな人が多い。みんなどこかで繋がっている。

私の部屋に着くと、スーさんがプレゼントをくれた。
前に遊んだ時に、子供の頃好きだったアニメや漫画の話をした。
という訳で、プレゼントは「幽遊白書」の蔵馬のトレーディングカードだった(笑)
素敵なラッピングと薔薇の香りの紅茶も添えて。

しかも何故か1枚だけ「Dr.イチガキチーム」が入っていた(爆笑)
マニアックすぎる。センスありすぎ。

押し入れから有り余っている手芸材料を広げ、
「好きなもの好きなだけ持っていって」と私が言うとスーさんはとても嬉しそうにビーズやボタンを選んでくれた。
一時期ハマったアクセサリー作りだが、今後は縮小していくつもりだったので手芸好きな人がもらってくれるのが一番ありがたい。
しかもスーさんはいつも手を動かして何かを作っている。その創作意欲の熱量は見習いたいばかりである。
私も負けじとちくちく久々の裁縫をしながらおしゃべりを楽しんだ。

コースターになる予定の布。この布は岩手で団子屋をやっていた友人からもらった団子の下に敷く用の布だった。

おやつにはちょうど食べ頃の沖縄マンゴーを切って出した。
マンゴーはちひろさんが作っているものだ。ちひろさんは元助監督で、ある映画の撮影現場で大変お世話になった。今は沖縄で無農薬のマンゴーを作っている。
それを今、こうして岩手の友人と頂いている。人の縁は不思議だ。過去と現在、沖縄と東京と岩手が、ひとつの瑞々しい果実をめぐって線で結ばれる。

濃厚で美味すぎるマンゴーにアイスとヨーグルトまで乗せちゃう

夕方になり、私は食材の買い出しに、スーさんは帰路についた。
なんとも可愛い一日だった。
ほんの少し前まで縁もゆかりもない土地だったのに。
不思議で、夢見心地だ。
時々、自分はこんなに幸せで良いのかと思うことがある。
もちろん、平穏な日々は長くは続かないだろうし、例えば親が急に要介護になるとか、そういった試練は待ち受けているだろう。
だからこそ、この街で過ごす毎日が愛おしいのだ。

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