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ワニは死ぬ日を知らない


Twitterで話題の『100日後に死ぬワニ』、ついに今日100日目を迎えてしまった。

ずっと読んでいた古参ではないのだが、誰かのいいねによって私のタイムラインに流れてくる4コマをちらりと見続けた結果、今日は定刻に何度も作者のアカウントページを更新するまでに虜になっていた。

そして結末を迎えた今日、まるでワニが「終わりはいつ来るか誰にもわからないんだ」と教えてくれているかのようなできごとがあった。


まず、私は来週でイギリスでの留学を終えることになった。

コロナウイルスの影響で強制帰国の指示が出てしまった。

イギリスでは日に日に感染者が増え、政府も方針を変えて学校が閉鎖になったりとパニックが起きている。

毎日毎日状況が変わる中、私の帰国が決まった時にはもう実家に帰っていた友人がたくさんいた。

半年間お世話になった友人に、さようならもありがとうも言えないままに私は日本に帰ることになってしまい、悔しくて悲しい数日を過ごした。


だからこそ私は、まだここにとどまっている友人には、きちんと別れを言ってから帰ろうと思っていた。


しかし今朝、さらに状況は変わった。

朝起きると、フラットメイトの一人が自国へと帰ってしまっていたのだ。

彼の国は国境が封鎖されているから絶対に帰れない、と昨日まで言っていたのに。

私は、彼の優しさに何度も何度も助けられた。

スマホを介したテキストじゃ伝えられないくらいに何度も助けられた。

お礼を言う機会なんてたくさんあったのに。

それなのに自分の言葉で感謝のことばを伝えられないままに、彼はここから去ってしまった。


「感謝はできるうちにしておけ」

こんなことば、陳腐以外の何物でもない。

しかし今日ほどこの言葉が染みた日はない。


そんなことがあった今日ワニは死んだ。

わたしたち人間はワニの日常を見ながら、

「○○後に死ぬのにそんなこと言うなよ!」

「『今度』なんて言ってる場合か!」

なんてワニにもどかしさを感じていた。


しかし、私の行動が「100日後にイギリスを去るしおり」として描かれていようもんなら、ワニとは比べ物にならないようなもどかしさを読者に与えてしまったに違いない。


コロナの影響で留学が終わり、友人がどんどん周りから去っていく私。

お花見を楽しみにしていたワニ。

両方とも、ただの日常である。
結末がわからないときは。

目に見えた変化がなくとも、何が起きるかなんて当の本人にはわからないのだ。




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