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Loving and Whisper

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私のnoteつぶやきより、 恋に関するものをまとめました。
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2019年1月の記事一覧

彼は

笑わない人だね、とあの子は言うけど
思いっきり顔をくしゃっとして笑うのは子犬を見た時だと、
私だけが知っていたらいい。

あまり冗談を言わないね、と父は不満をこぼすけど
友達の20年以上の持ちネタのギャグが今でもツボなのは
私だけが気づいていたらいい。

意外と器用貧乏だね、と祖母は笑うけど
優しすぎて、責任感が強いゆえの性格だと
私だけが理解していたらいい。

少し言葉を交わせば
少しだけ目を合

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みらい

ソファで隣同士に座って、気づいたら寝ちゃってるとか
朝急いで準備してたらうっかりコーヒーカップ取り違えてミルク入ってない方を飲んじゃうとか
テレビでどのチャンネルでもなにもしてないから、久々にラジオ聞こうとしたら古すぎて壊れていたとか
小さい、幸せな事件を積み重ねて
50年後とかに笑い話にしつつも、また同じことをしちゃうような
そんな日々を。

コンビニで流れる流行りの甘ったるい歌を
気づいたらおにぎりを選びながら一緒に口ずさんでいて
それに気づいたあなたがお茶を手に取りながらこっそり合わせてきて
ゆったりとした気持ちのいい幸せが
もっとずっと続いて欲しいと願う。
何十年先も一緒にいるんだろうな、と
思ってしまう。

洒落た香水も
一昔前のワインも
可愛い口紅もいらないから

暖かい香りがするあなたの首に顔を埋めたい。
必死に入れたコーヒーがほろ苦くて、笑いながら飲む朝を迎えたい。
ゆるく指を絡めて散歩に行きたい。

薄いピンクを唇に引いた朝のキス
真っ赤な口紅で描いた笑顔のキス
深い紫で妖しく誘う夜のキス

一つ、一つ
少しずつ
貝で作った毒を唇から舌へ
少しずつ、少しずつ
喉に張り付くように、胃を黒く腐らせるように
毒を愛と称して

少しずつ。

くちびるかみしめはしりだせ
てゆびにぎりしめさけびだせ
あしがもつれようとも
いきがきれようとも
生きて生きて生きていけ

恐怖を抱え、孤独を壊し、
守るため生きるため

くちびるかみしめはしりだせ
てゆびにぎりしめさけびだせ

逃げ出せ、助けを探せ
生き延びて

夢から覚めるひととき前に
聞こえた気がしたけど、やはり気のせいかしらね

夢から覚めたひとときの合間に
言うてくれたと信じたいけど、無駄なのかしらね

好きって囁いて、ほしいだけ。

布団をかみちぎるほどに口を押し付けて泣き声を押し殺して
あゝ
あゝ
囁きたかったあの言葉も、
呟きたかったあの言葉も、
叫びたかったあの言葉も、
布団と一緒に噛み殺して。
あなたの耳に決して届かぬよう。

こいぶみ

触れるか触れないかぐらいの会話が心地よかった
ワインに口を付けるか付けないかぐらいの距離感が楽しかった
薬指と中指の爪が当たるか当たらないかぐらいの遊びが好きだった

私たちはお互いに触れすぎて、口づけを交わしてしまって、指どころか足元までからみ合わせてしまって。
だから、ダメだったのね。
だから、ダメになったのね。

夏のあなたはかっこよくて
秋のあなたは優しくて
でも春のあなたを私は知らなくて
冬のあなたはここにいない。

「あなたは覚えているだろうか」
この一文が最後となった
何年も前の歌声がおさがりのラジオから聞こえて
さぁ、どうなんだろうと思った。
あなたは覚えているだろうか。
私への愛情を。
私からのキスを。
歌にはできないから、
せめてもと、あなたへの手紙を
スケジュール帳の隅に書き綴る。