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アンティークコインの世界

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前7世紀に世界で初めて金属製の円形コインがリディア(現在のトルコに位置した古都)で発行された。物々交換の効率の悪さから解放され、小さく軽く携帯しやすいコインによって人間はさらに商…
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2023年7月の記事一覧

アンティークコインの世界 | 神聖ローマ帝国 都市景観 ターレル銀貨

今回は表題の通り、神聖ローマ帝国で発行された都市景観を描いたらターレル銀貨を紹介していく。現ドイツの都市アウグスブルクで発行された一枚で、17世紀当時のアウグスブルクの街並みを写した傑作である。それでは、早速観ていこう。 神聖ローマ帝国アウグスブルクで1639年に発行されたターレル銀貨。フェルディナント3世の肖像とアウグスブルクの都市景観を描いている。都市景観側の中央に描かれた松ぼっくりは、アウグスブルクの都市紋章で豊穣と繁栄を象徴している。三十年戦争の真っ只中、当時の街並

フランス革命のその後 | 繰り返す革命と人々の記憶

今回は、1789年に勃発したフランス革命のその後に焦点を当て、当時の歴史を追っていく。時はフランス革命が収束し、ブルボン家が再び王座に舞い戻ったルイ18世の治世から始めよう。オーティエという人物の回想録から、フランス革命後のフランスの情勢が詳しく窺える。以下、オーティエの回想録を元に当時の出来事を述べていく。 王室の髪結いオーティエが記した回想録からは、ブルボン家の人々がいかに横柄で薄情だったかが窺える。もちろん、回想録は筆者の主観が入り過ぎることと、オーティエ自身が盛癖の

セレスタン・ギタールの日記から探るフランス革命期の貨幣事情

ルイ16世が処刑された1793年1月21日は、気温は3℃で天候は曇り空の湿った日だった。これはギタールという名の一般市民がつけていた日記から得られる情報である。フランス史には取り挙げられることのない些細な情報だが、気温や天候から空気感のようなものが伝わり、当時の情景がより鮮明に想像できる。 当時の人間が記した日記は、自分がそこにいたかのような感覚にさせてくれる。肌寒くどんよりと曇った空の下、ルイ16世はこの世を去った。そうだったのか。そんなこと、教科書のどこにも書いてなかっ