小さな山の中で家具職人をしている若者の話⑧嫌いな虫を好きになる-前編-
前の話↓
ここで働くと決めた時、不安要素の一つに"虫"があった。
前回ヒルと格闘したエピソードを紹介したが、山の中にはそれ以外にも様々な虫がいる。
私は虫が大嫌い。
特に羽音が大嫌い。
耳元でブン!となるだけで、叫び声をあげてしまう。
毎日泣きべそをかきたい気持ちになったけど、ここで頑張ると決めたので逃げるわけにはいかなかった。
ここでは、ただ歩いているだけで小虫を吸い込んでしまう。
別に口を開けているわけではない。
鼻で息をしているだけで顔の周辺をたまたま飛んでいた虫が巻き込まれてしまうのだ。
慌てて吸った息を吐く。
フンッ!フンッ!
耳元を小さな虫が飛び回る。
プ〜ン、ブ〜ン
鬱陶しくて仕方ない。
それに私は人より虫に刺されやすい。
そして刺されたら全然治らない。
熱を持っていつまでも痒い。
かゆみ止めが手放せない。
虫は私たちよりも遥かに小さな生き物だ。
虫に殺される不安もない。
それなのになぜこんなに怖いのだろう。
昔誰かが言っていた。
虫はエイリアンなんだよ。
虫の進化の過程には非常に謎が多く、空白の期間があるらしい。
だから地球外から持ち込まれた生物なのではないか、という説だ。
気になる人はぜひ調べてみてほしい。
とても興味深い話だ。
私はどうしたら、虫と仲良くなれるか考えた。
とても真剣に考えた。
ここで生き抜くにはそれが手っ取り早いと思ったから。
私は自分に言い聞かせた。
虫だって一生懸命生きてるんだし、彼らは何も悪くない。
こんな半分外みたいなところで仕事してるんだから共存するしかないんだ。
私はナウシカ!
虫とも仲良くなれる!
私はナウシカ!
大丈夫!
ブゥ〜〜ン!
耳のそばを虫が通り過ぎる。
ギャアアァァァ〜!
私の叫び声にビビって皆いなくなればいいのに…。
続き↓
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