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娘に贈る回顧録 7/7300 大泣きの日々②

毎日、幼稚園の前で泣き叫ぶ。

他の子供たちは不思議そうに見ている。

連絡帳には、園内での様子が細かく
書かれている。

【朝のごあいさつ】が始まる頃には
他の子と同じように落ちついて
先生の話を聞く  らしい。

【お遊戯】は率先して動く  らしい。

【お弁当】はお歌も楽しく  らしい。

【お迎え】までは、お友だちと手遊びや
折り紙で遊んで待っている  らしい。

朝だけ、大泣き。
しかも、柵にしがみついて。

置いて帰る後ろめたさより、
早く離れたい気持ちが大きくなった。

どうせ、中に入れば楽しく過ごすのだから。

どうせ、帰ってくれば楽しかったと言うのだから。

 
ある日、
「振り向かないで!」ではなく、
「少しお待ちください」。

相変わらず、泣きながら
抱っこされてお教室へ運ばれていく。

いよいよ何か苦情を言われるのか。

先生が戻ってきた。
その間5分。

「もう、落ちついています」
「帽子やカバンも自分でロッカーに」
「シール帳も指定の箱に」

「ちゃんと出来ています」

「お母さん、大丈夫です!」
「お母さんの方はどうですか?」

※※※※※※※※※※

ゴールデンウィーク開け
また、あの日々が始まる。

門の前。

泣き出す前に、まず私が抱き締める。
『必ず、お迎えにくるから』
『大丈夫、行っていらっしゃい』

先生が駆け寄ってきて、抱き締める。
「おはよう、きょうはなにをしようか」

そのまま手を繋いでお教室へ。

えっ? 

こんなにあっさり?

※※※※※※※※※※※※※※※※※
「実は魔法の言葉がありまして…」
あの日教えてもらった。
『必ず』『大丈夫』

まだ20代の若い先生だった。

泣き出す娘をいつも励ましてくれた。

様子を細かく記したメモもたくさん書いてくれた。

そして、娘と私に
いちばん欲しかった【安心】をくれた。
 

大泣きの日々は、おわった。