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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 354

『あれは、お前の脳が上位世界の負荷に耐えるように、お前の認識に合わせて世界を見せているだけだ』

 だから、真に受けるなと、直接脳内にユリウスの声が聞こえてくる。

「うっあっ、あぁっ……、こんなぁ、こんなところでええええええええっ!!!」

 魔導姫の断末魔が空間に響く。黒いローブごと肉体が砂化してアステリアの存在が崩壊し、光が走る床がチカチカと明滅を繰り返した。
 開いた空間が縮小をはじめて、濃密な闇と静寂(しじま)が押し寄せようとしている。

「これで、終わった」

 終わりの気配を感じてファウストは膝をつき、ゼロの方へ視線を向ける。

「……っくは」

 苦し気に息を吐くものの、ゼロの方も生きているようだ。上体を持ち上げて、アステリアがいないことを確認すると、皮肉気に持ち上がった唇が徐々に下がっていき、緩やかで自然な笑みを浮かべる形となる。表情に広がる安堵と安らぎに、見ていたファウストの口角も自然と緩んできた。

 自分たちはうまくいった。
 名前を剥奪したことで、試練の間にいるアステリアの複数体も消滅し、肉のイスに拘束されている末姫も解放されているだろう。
 地上は地獄だが、ここから巻き返せるはずだ。

 そうここから――。
 

 

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