見出し画像

書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 490

「…………」

 頭上に影が差すが、三人は気づかない振りをする。
 振り返ったら最後、まとまろうとした話もまとまらなくなるからだ。彼らの全身を舐めまわす不快な視線と、圧倒的なプレッシャーに心臓が、魂が恐怖で破裂しそうにするも、彼らは自制心を総動員しながら話を進めていく。

「種神は確実に、僕たちに力を貸すさ。というか、貸すしかないんだ」
「……それで、具体的にどうすればいいんだ?」

 ファウストが苦虫を嚙み潰したような険しい顔で尋ねる。ジンは水槽を見ながら言う。

「種神の姿を見たことがあるか?」

 逆にジンが問いかける。彼の手に持っている水槽には、金魚もタコもいなくなって透明な水がキラキラと光を反射しているだけだ。

「僕もここで何度か観たことがあるよ。そして思ったんだ、種神には考える脳みそがないんだ。脳みそだけじゃない、頭部と首、目、耳、鼻、口、舌、咽喉。胸部、 心臓、肺、気管、気管支、胸腺、食道。腹部、 肝臓、胃、膵臓、腎臓、小腸、大腸、膀胱、胆嚢。腰部と骨盤、腰椎、骨盤、大腿骨、股関節。四肢、 腕、上腕骨、前腕骨、手首、手、脚、大腿骨、脛骨、足首、足……性器以外――本当に全部ないんだ」

#小説
#連載小説
#ダークファンタジー
#ダークファンタジー小説
#オリジナル連載小説


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?