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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 496

――王家の墓、オリーブ園にて。

 デオンは墓場を歩き、今日まで積み上げてきた失敗作たちの棺に黙祷する。

「なぜ、遺髪をオリーブの枝に括り付ける弔い方にしたのですか?」
「因果律の調整みたいなものだよ。新天地で俺達では手に負えない、未知の生物や植物が発生しないように、この場所のこの位置で生きた証という名の情報を保管していたんだ。それがようやく花開く――」

 デオンは隠し持っていたナイフで自身の髪を切り、地面にばらまいた。

【マスターコード認証。転移魔法陣を起動します】
「デオン……殿? これは……」

 響き渡る機械音声の内容に、ティアはデオンに問いかけようとするも、デオンの意識はすでに別の方に向かっていた。「あーあ。またリーダー役なのかな」とぼやいて、盛大にため息をつく。

 圧倒的な光が迫っていく。
 世界の理が新しく構築されていく。
 500のルートに固定されて、本来ならば無限大に広がるはずの行き場を失っていたエネルギーが、この世界を滅びへと巻き込もうとするも。
 この世界に連れてこられた人間たちが、数年年におよぶ執念が受け皿となった。
 ポーロス大陸の地下迷宮――否、世界中の人類種を新天地へと移送する転移魔法陣が起動して、蹂躙の光が規則正しく解き放たれる。

「デオン殿?」

 光が通り過ぎたあと、地下墓地にいたのはティア一人だった。

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