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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 500

「それでは、今後もごひいきに!」

 護衛として観光業者に変装した、ファウストとプルートス別れる。
 家族と再会し、久々のだんらんに心を温めながら、ティアは別の事を考える。

「ティア様、もしかして」
「カーラもでしょう」

 こっそりと城を抜け出したティアとカーラはニヤリと笑い合うと、カジュアルな格好に着替え直したファウストとプルートスに合流した。

「お前、いつの間に口説いたんだよ。従兄なんだろう?」
「ですが、不測の事態とはいえ奪ってしまいましたし」

 呆れるプルートスの横でファウストは頭を掻いて苦笑した。
 この世界では観光客同士の転倒事故が発生し、その時にティアの身体を受け止めようとしたファウストが、はずみで彼女の唇を奪ったことになっている。

「そうです。ファウスト殿! わたしの初めてだったんですから、責任を取ってくださいよ」
「ほら、姫様もそう言っています」
「開き直るな! あー、頭がいてえぇ」
「それじゃあ、私が癒して差し上げますわ」

 すべては予定調和の元に。
 アステリアの鎖から解き放たれた世界で、ティアは初恋の味を堪能することにした。

 それまるで甘酸っぱくて、林檎のような味だった。

【了】

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