書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 94

「自分はユリウスの【目】を通じて、霊廟の中にある試練の間が、今、どのような状況なのかを見ました。【魔力菌糸体マナ・マイスィーリアムのネットワーク】で自分とナインバーズは脳内回線を通じて、その時の記憶と感情も共有できるのです。……しかし、ユリウスによってサードが乗っ取られた影響なのか、自分の頭に送られてきた状況は断片的な物であり、勝手に断言してよいものなのか迷いが生じました」

 神妙な態度で語るファウストは、暗い視線を隠ぺい魔法が解除された隠し通路に向ける。そこには、まるで切り取ったかのように、護岸の斜面に石造りのアーチで縁どられた入り口と石畳の道が続いき、道の先には闇が広がっている。
 魔王が暴れていた暗黒の活動期に作られた、権力者専用の隠された脱出経路は25年前のテロが起こる前までは、歴史的文化財として魔力(マナ)を込められた補修と修繕が繰り返されて、当時の雰囲気をのこしたまま現代に残されていた。見栄えのいい場所は観光名所として公開されたものの、全体の本当に一部。経路の全体像はオルテ全土に至るとされており、迷宮ともダンジョンともささやかれて、比較的、友好的に評されていた。

――25年前に、テロリストたちの潜伏場所として利用されるまでは。

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