書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 91
このまま砂浜にいくのかと思ったら、坂の途中でファウストが立ち止まり、彼の肩にはいつの間にかフクロウがとまっている。確か、彼のスキルに【ビーストテイマー】があったことをティアは思い出した。
東洋のダルマを思わせる丸々とした漆黒のフクロウは、ルビーのように赤い瞳を持ち、その瞳で下り道とともに続く護岸の壁を凝視して、やがて「ホウッ」一鳴きする。
どうやらフクロウの瞳を借りて、隠ぺい魔法が掛けられている場所を探っていたらしい。
「姫様、隠ぺい魔法を解除するには、王族の血であらせる【尊き青バラの血】が必要です。どうぞ流れる血を流させていただくため、その尊きお体を傷つける身勝手をお許しください」
「え、ファウスト殿」
いきなり改まった口調で臣下の態度をとるファウストは、戸惑うティアの手を取った。
「キャッ」
バサバサと羽ばたく音に驚いた束の間だった。
フクロウが鋭い嘴で、ファウストが手を取っているティアの手をついばみ、道路に赤い雫を滴らせる。
「な、なにをっ」
ティアは手を引っ込めると、赤い血が花びらのように舞った。
「姫様、大丈夫ですか」
カーラが慌てて回復魔法をかけて、プルートスは突然の部下(ファウスト)の暴挙に声を荒げる。
「ファウスト、なんのつもりだっ! なんで、わざわざ契約している使い魔を使った!」
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