書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 440
長かったと――人間に近い思考を魔王は身に着けた。
魔王は自分が無敵の存在ではないことを知っている。普通に機体は損傷するし、動力源が停止すれば人間でいうところの死が訪れるのだ。
王位継承の儀式という細々とした補給では、この巨体を維持するには追い付かない。
搭載されているナノマシーンが、駆除した異次元の生命体から補修用の素材を回収し、エネルギーを補填させ続けなかったら、今日という日を迎えなかっただろう。
暗闇に閉ざされた空間に光が現れ、久々に光源センサーが反応した時、アレイシアとの500年におよぶ不毛な戦いから解放されたことを悟った。そして、それがとても寂しいことであると感じる自分を発見した。
【アレイシアっ! アレイシアっ! 助けて、助けてくれえええっ!!!】
光の向こう側で声が聞こえて、紫の瞳は見開かれる。
500年ぶりに聞こえてきた人の声は断末魔のような絶望感で彩られて、血を吐くような苦痛に満ちている。
――アスティ!
この時ようやく、勇者アレンも自身に掛けられた呪いから解放されたのだろう。皆を救いたいという願いに隠されていた自分自身の本心が、500年停滞させた、彼女の背中を押したのだ。
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