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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 171

――ドクンっ! と、強く心臓が跳ねた。
 記憶の海に潜っていた意識が、現実の異変を察知して慌てて浮上をしようとする。

「うわっ、アルちゃん、どうしたんですか」

 意識の彼方から聞こえてくるカーラの声には、困惑と驚きと焦燥感が滲んでいた。

 アル。ファウストの使い魔の黒いフクロウ。美しい赤い瞳を持ち、わたしの血肉をついばんだことで、魔導のパスがつながった。

 ティアは意識を集中して、自分とアルのつながりを強く意識しようとする。主人の身に異変が起こったからこそ、アルは主人の危機を伝えようとしている。

 ファウスト殿っ!!!

 ――ドクンっ!

 また鼓動が強く脈打った。
 まるでなにかに怯えているみたいに、身体の震えが止まらない。
 大多数の賊どもを相手にしたプルートスの強さを知っている。危機的状況に瀕して、ティアに血肉を分け与えたファウストの冷静さも知っている。
 なのに、なぜこんなにも不安が自分を苛むのだろうか。

 ぎゃあっ、ぎゃあっ、ぎゃあっ、ぎゃあっ、ぎゃあっ……。

 悲鳴をあげるように絶叫を繰り返し、バサバサと翼をはためかせる音。見えないのに、リアルに想像できるほどのアル(使い魔)の狂乱ぶりから、試練の間に向かった二人が危機的状況に陥っていることが分かった。

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