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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 266

 セカンドの醜悪な肉塊に呑まれていく娘の姿に、ファウストの中のイーダスが発狂する。

『ああああッ!!! ティア、ティア、そんな、約束が違う。アステリア、どうしてそんなことを。娘をそんな目に遭わせるために、私は貴女に知識を渡したのではない』

 サードの目から見た試練の間の惨状が、突然現れたガイウスが、アステリアがなにを考えているのか、ファウストは捜査官としての洞察力を駆使して答えを導き出そうとするが、目前で起きる事象はあまりにも常軌を逸しており、冷静な思考を奪うばかりだ。

 姫様。

 世界を救う――高潔な使命感をたぎらせていた少女の末路。
 涙が枯れた紫の瞳は光を失い、もはや助けを求める気力すらない様子がもの悲しく、捜査の際にいやでも目にした被害者たちの姿と被る。突然の理不尽に心が壊れ、生きる気力を奪われた彼らが社会復帰するのが難しく、もう二度と元に戻ることはない。

「すごいなぁ、ネビュラ・タランチュラの粘液から逃れるなんて。しかも、パワーアップするなんて、反則技じゃないか」

 そこへ、試練の間へ向かおうとするファウストの元に割り込んでくる声。
 ふわりとファウストの目の前に漆黒の布が翻って、行く手を立ちふさがるようにアステリアが現れる。

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