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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 173

 戦場から離れて勘が鈍ったと、カーラは心の中で自嘲する。
 自分が通路のどこを走っているのかは、考えるのをやめた。後ろからファウストの使い魔が追ってくるが無視をする。

 ティア様、怒ってる。

 抱きかかえているティアの小さな体。抱きかかえている腕から伝わる、筋肉の緊張が、ティアの意識レベルと感情を物語っていた。
 経験則でカーラはわかるのだ。今のティアの意識は、水面すれすれを漂っているような浅い眠りの状態に近い。だから、カーラはティアに声をかけて詫びる。

「ティア様、申し訳ございません。生きのびることが出来ましたら、いくらでも恨んでくれて構いませんので」
「……………」

 カーラは髪の毛に擬態している蛇たちに意識を集中しつつ、青い瞳に強い光を灯す。
 カーラのノーマルスキル【視界共有】と【熱感知】。制御装置であるヴェールを外して、幾千幾万の蛇たちとの視界を共有する。

 光源の乏しい暗い通路と、熱源のグラデーションで縁どられた世界が重なり、さらなる最奥最深に隠し部屋がないかを蛇たちに探査させるのだ。
 カーラの知識に寄れば、この元ポーロス大陸の地下大迷宮は500年をかけても尚、全解明されていないのだ。


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