書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 46

「あ、そうだ。あなたの手当てをしないと」

 一連のことを思い出していたティアは、ファウストが自分を救うために自らの掌を噛みちぎったことを思い出した。
 慌てて彼の右手をとって傷口を確認しようとすると、血はすでに止まっており、ピンクの肉がごぼごぼと盛り上がり始めてる。

 おいしそう……。

 目に飛び込んできた健康的な肉の色に、盛り上がっていくピンクの塊に、唾液があふれてきて止まらない。

「その、ファウスト殿は回復魔法が使えたのですか。血が止まっているのに、気が付きませんでした」

 ティアは会話に集中することで、湧き上がる衝動から逃れそうとした。ただでさえ濃厚な血の匂いが漂い、すぐ近くてカーラとプルートスが睦み会っている。夜族の血を刺激するには十分すぎる要素の中で、果たしてティアは自分を保てるかどうか……あまり自信がない。

「いいえ、ちがいますよ。自分の血には、トレント族とマタンゴ族の血が入っています。肉体の中で薬草を作ったり、肉体が損傷したら菌糸で疑似的な肉体を作り上げて治療することもできるのです。この技術を応用して、姫様の父君であるイーダス様は、新たな検死方法と治療法を王立警察に提供いたしました」
「……それは、損傷の激しかったレオナ姉さんの死体を復元することも含まれているのですか?」

 

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