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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 498

「――」

 黒い翼を広げて、ティアは空を飛ぶ。
 暗黒種である同胞たちは、かわいらしい末姫の存在を歓迎して、戯れながら繋がり合う。
 彼女は動ける生命の樹――多くの命を吸い上げて、無限に増殖して現世へと還す黒き聖女。

 暗黒種をすべて取り込んだティアの身体は、黒い巨塔となってそびえ立ち、デーロスに住まう者たちは本能に従って生命の樹へと殺到する。

 世界は汚染された。けど、壊されたわけではない。
 本来の機能に従って、世界自体も黒い巨塔へと吸い込まれていく。デーロスという異世界は、ある意味、もう一つの生物でもあるからだ。

 世界を吸い込んだ巨塔は、黒真珠の如く膨れ上がって虚空に浮かぶ。
 刹那――パチンっと、音を立てて黒真珠が弾けた。
 弾ける瞬間に咲く、大きな黒いバラ。
 花びらのような黒炎が燃え上がり、時間がめぐり、一つの形へと結実する。

 一人の少女が切望した、ハッピーエンドの形へと。

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