書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 85

「せいか~い、ずいぶん老けたなぁ。サハギン族の血のせいで、成長速度が加速したのか?」
「ユリウス、もしかしてお前、サードを乗っ取ったのか?」
「イエス、不本意ながら。本当だったらスペアとして用意していたコイツがオレになるはずだったのに、埋め込んだ記憶因子が発現したのが、まさかの劣化コピーの方だったわけだが、これで約束が果たせそうだ」

 プルーストの問いかけに答えたのは、ファウストの声のはずなのに、彼の声ではなかった。ファウストの声を澄み渡る春風のような声だとするならば、ユリウスと呼ばれた男の声は、極寒の大地を吹きすさぶ風のようだ。
 声音に込められている、ぞっとするほど冷たくて、触れたら凍傷になりそうなくらい鋭利な刃を感じさせる強い敵意。
 表情もファウストと比べると険を帯び、口元が嘲笑の形にひん曲がっている。

「約束、25年前のか。ということは、カーリアは無事なんだな」
「無事の無事さ。娘の方も無事、テロリストの鎮圧も完了したけどちょいと厄介なことになっちまった。ということで、息子とゆかいな仲間たちは、至急、霊廟に向かって欲しい。近くに脱出用の隠し通路が、隠ぺい魔法で隠されているから、そこから墓場を経由して試練の間に来てくれると助かる」

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