書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 93

「おまえは、ユリウスの【目】を通してなにを見た?」

 プルートスの低い声に気迫がこもる。彼の身体から青白い魔力の奔流が流れ出し、彼の怒りに呼応して空気が震えた。

「答えろ。俺を怒らせたらどうなるか、お前が一番よくわかっているだろう」

 その言葉にティアは戦慄する、プルートスの魔導の技術とコントロールは体内の水分を操るまでに至るのだ。下手をしたらファウストは全身の水分を暴走させられて、瀕死相当の脱水症状に見舞われるかもしれない。
 ファウストはプルートスが本気だと気づいて、眉を少し動かした程度であるが、変えなかった表情に少し変化があった。

「報告連絡相談は捜査の基本でしたね。そして、あなたが必要だと判断すれば、部下を切り捨てられる人間だということも、自分は知っている」

 ゆっくりと語りだすファウストの声には、憂鬱気な気配がこもっていた。心なしか、彼の右肩に止まっている使い魔のつくろうも、不機嫌な眼差しでティアたちを眺めている、

 ティアの血によって、護岸の壁の一部に施された隠ぺい魔法(光魔法)が解かれたものの、先へ進むにはユリウスを通じて、試練の間で何かが起きているのか、それを知るのが最優先なのだ。
 ややあって、ファウストは答えた。

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