書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 40

『娘の血統鑑定はどうでしたか?』

 彼方から聞こえるのはティアの父親との記憶だ。宮廷魔導士である父は、前回の王位継承で起きたテロの主犯格を検挙した功績から、青バラを咲かせる栄誉を賜ることになった。
 王族の血を引いているがティアには王位継承権がなく、幼少のころは父親と他の姉妹とともに離宮で過ごしていた。

『はい。クラウディア様は人間種の血が色濃く出ていますが、環境の変動により他の血が活性化する可能性があります。とりあえず、抑制剤を処方しますので様子をみましょう』

 父にカルテを渡した主治医は、慣れた様子で父に説明するが、カルテを受け取った父の表情を優れない。

『人間種が50、ホビット25、夜族15、暗黒(クトゥルフ)種が10……そうか、私は人類種の純血だから、想像することが難しいな』
『お父さま?』
『……ティア、すまない』

 父があの時、なぜ娘に詫びていたのか、知った時にはもう後戻りが出来ない状態まで来てしまった。

「分かりました。姫様の初めてを務めさせていただきます」

 ためらうことなく、ファウストが首を差し出してきた。スーツをはだけさせて、青白い月光に照らされた太い首。皮膚からうっすらと見える血管が、ティアの意識に揺さぶりをかけている。
 体中の細胞が絶叫に近い産声を上げて、周囲に広がる濃厚な血の匂いにめまいを感じた。

 空腹よりも激しい、根底から突き上げてくる強烈な飢餓感が、ティアの意識に語り掛ける。

――この男を喰らいつくせ。と。

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