書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 88
沈黙が場を支配し、重苦しい空気が流れた。
プルートスは黙っているわけではない、ただ情報量が多すぎる上に、一刻もはやくユリウスの元に駆け付けたい気持ちもあって、彼の中で適切な情報の形に完結しないのだろう。
「25年前ですかー。私がまだ傭兵で、イシュタル大陸でぶいぶい言わせていた時期ですねー」
沈黙を破ったのは、カーラののんびりとした声だった。声の印象とは別に、澄んだ青い瞳から強い光が宿り、形の良い唇をきつく引き結んで思案気に顔を伏せている。
カーラにとっても、何かが引っかかっているようだ。ティアは、胸の奥に湧き上がる不安感を押し殺しながら、おずおずと手をあげて発言の許可を求めた。
「その、まずはユリウス殿の言っていた、隠し通路の場所を探しましょう。情報の真偽はともかくとして、このままじっとしていても始まらないです。体を動かせば、脳も動くとヘルメス教授が言ってました。ファウスト殿もプルートス殿も下手に言葉を選ばずに、身体を動かしながら、自分のいま感じていることを話してみてください。このまま黙って、疑心暗鬼になる方が一番危険だと思います」
ティアの発言はじつに学生らしい健全な考え方であり、それが却って三人の大人たちの熱を冷した。
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