書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 95

「自分は……オレは、許せない戦い方をしたユリウスを父親とは認めないっ! 認めたくない、あんな惨いことを平気でするなんて、今でも思い出しただけで、胃が痙攣してきりきり痛くなる」

 ファウストは苦々しい顔で言い、その場でつばを吐いた。自分が私情に流されているのを理解しているからこそ、余計に腹立たしく嫌悪感が募るのだろう。
 契約者の肩に乗ったフクロウが、ファウストを慰めるように柔らかい羽毛を頬に寄せてきた。
 青白い月光に照らされて濡れたように輝く黒い羽根は、滑らかなベルベットの感触であり、フクロウのルビーの瞳には沈着化の魔力が込められている。

「ありがとう、アル」

【アル】と、いうのはこのフクロウの名前なのだろう。

 使い魔の気遣いに気づいたファウストは、優しくフクロウの小さな頭を撫でると、アルは目を細めてファウストの愛撫を受け入れた。
 少しだけ落ち着きを取り戻したファウストは、アルの頭を撫ぜながら話を続ける。

「まず最初から話しましょう。サードがカーリア陛下とアマーリエ殿下の護衛として着任した時、かなりぎりぎりの感情を持て余していました。俗に言う罪悪感です。レオナール姫を守ることが出来なかった自責、セカンドが自分の代りに軍に出向したこと、こんな自分がレオナール姫の姉と母を守ることができるのかという緊張と不安で、頭がおかしくなる一歩手前だったのです」

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