書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 434
紫の瞳を見開いて唇を震わせる顔に、ティアの中で疼く部分。
自分が切り捨てた――造られた理想像。
「あなたの名前は、ニーケよ。もう、カーリア・ヴィレ・オルテュギアーでもアマーリエ・ヴィレ・オルテュギアーでもない、ただ一人のわたしの眷属。生まれる前の過去のことは忘れて、これからはニーケとしてわたしに従いなさい」
「あ、うっ」
冷酷に言い放つティアは、ニーケの頭に洗礼のごとく手をかざした。
手と頭の間に電流が走り、苦し気に呻くニーケ。彼女の黒い瞳には恍惚の色が浮かび、背中に生えている蜘蛛の脚が、恍惚の絶頂を表すようにぴんと伸びる。
洗脳ではなく支配。
成長による儀礼ではなく、自らの忠実な眷属が欲しい末姫は、残酷な手法で親殺し・姉殺しを遂行したのだ。
カーラは声を失うが、すでに父殺しを行ったアレイシアの方は、ひきつった笑みを浮かべて声をしぼり出す。
「ねぇ、アスティ。これで、どれくらい500通りの未来のうち、何通りの未来があたしたちに残されたのかしら?」
表情に焦りが滲むが、発する声にはまだ余裕があった。
「200だよ」
「そう。じゃあ、うかうかしてられないわね」
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