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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 182

「ファ」

 名前を呼ぼうと口を開いたタイミングで、ファウストの唇がティアの口を塞ぐ。口内にぬるりと舌が侵入して、ティアの舌をすくいとり絡みつくように吸い上げる。

 じゅる、ちゅぷ。

 卑猥な音が耳に届いて、ようやくティアの頭の中で危険信号が点滅し始めた。

 やめて……。

 その言葉が喉元まで出かかるも、ファウストに対して望んでいた獣欲と下腹部を走る甘い疼きが、抵抗の意思を挫き、悲鳴をあげる理性を溶かす。

 ダメ、ファウスト殿は、わたしの従兄で。父親がわたしの父と双子で……。

 下手をしたら近親相姦だ。確かに、彼女はファウストに対して一人の男性として意識し、一つに溶け合いたいと願っていた部分もある。だが、いざ現実にそれを突き付けられると、ティアの脳は欲望と理性で混乱した。

 夜族の血が喜びで騒ぎ、紫の瞳が熱を帯びたように潤む。

 え?

 そこで、ふと違和感を覚えた。
 自分は今、眼鏡をかけていない。なのに、どうしてこんなにも鮮明にみえるのだろう?

 そんなティアの混乱をよそに、ファウストはキスをしながらドレスのスカートをめくりあげて、下着がつけられていない湿りを帯びた部分に指先が触れる。

「ふぁ、やぁ……」

 と、小さな喘ぎ声をあげて肩をびくりと震わせた。

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