書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 177
ティアは自分が異常だと気づいていない。
彼女とカルティゴで暮らして五年。オルテの末姫として、当然ながら命を狙われて、学生生活も通常とはいいがたく、交友関係もティアに気づかれないようにカーラとヘルメス教授が選別した。基準は、彼女の盾となっても問題が起こらない身分か、または不意の襲撃をかけられても生き残ることができるか否か。
主人は今日まで生き残ることが出来たのは、カーラと周囲の個体たちによる涙ぐましい努力のたまものだと考えている節がある。自分は取るに足らない脆弱な個体で、何もかもが周りの協力があって成り立っていると。
その幸せな勘違いと認知のゆがみを矯正しなかったのは、カーラが内心で恐れたからだ。
イシュタル大陸で傭兵をやっていたころに出くわした、暗黒種たち。
アレをどう表現したらいいのか、いまになっても分からない。
彼らにとっては、ただ大陸を横断していただけなのだろう。
外見は巨大な海洋生物に似ている気もしないではない……。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
だが、本能が告げていたのだ。
関わってはいけない存在だと。
カーラはあの時、自分がみっともなく悲鳴をあげて逃げたことを英断だったと信じている。
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