書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 86

 軽薄な言葉を吐きながらも、ユリウスの声には切羽詰まったものを感じさせた。一気に自分の要求を言い切り、すぐにでも移動してほしいという顔でプルートスをみると、プルートスの方は「相変わらず、素直じゃないな。死んでも治らないのか?」と、頭を掻く代わりに、頭髪に生えている青白い鱗を撫でる。
 お互いが軽口を叩いて通じ合っている信頼関係からは、ファウストを通じて見ていた偏屈な人間像とは程遠く、癖が強いが義理がたい印象を覚えた。

「じゃあ、回線を切るからよろしく頼むぜ」

 そう言って目を閉じると、表情に変化が起きた。ねじ曲がった口元が元に戻り、表情が柔らかいものに変わっていく。肉体と意識がファウストへと主導権が戻ったことがわかり、ティアは安堵したが、元に戻ったファウストの方は顔を真っ青にさせて、ふらりと体をゆらした。脱力して道路に膝をつき、背を海老のように丸めたかと思うと。

「うげっ、げええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ………」

 まるで悲鳴をあげるかのように、その場で吐瀉物を吐き出し始めた。

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