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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 181

 まるで水の中にいるかのように息苦しくなり、視界が明滅を繰り返す。
 意識が浮上する感覚とともに、ティアは重たい瞼を持ち上げて紫の瞳を開いた。

「うっ……ん」

 ここは?

 現状を確認するために上体を持ち上げようとすると、違和感を覚えた。体がうまく持ち上がらない、さらりとした絹の感触を肌を撫でて、首のあたりに圧迫感と重さがあった。

「姫様」

 え?

 思考がまとまらない。なぜ、眼の前にファイウストがいる? 光のない翠色すいしょくの瞳がティアの身体をイヤらしく撫でまわして、ぐいっと乱暴になにかを引っぱる素振りを見せると、そのままティアの身体はファイウストの胸へと収まった。

 え……、え?

 自分がどういう状況なのか、ティアは思考をまとめようとする一方で、現実を直視したくない部分が、彼女の思考と恐怖を麻痺させようとする。
 
 なぜ、自分が黒いドレスを着ているのか分からない。
 なぜ、自分の両腕がないのか分からない。
 なぜ、自分の足がないのか分からない。
 なぜ、自分が首輪をつけているのか分からない。
 なぜ、その首輪から鎖がついているのか分からない。
 なぜ、ファウストが鎖を握り、自分を犬のように扱おうとしているのかわからない。

 なにも、かもが、わからない。

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