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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 353

 その弱点を補ったのがゼロの肉体であり、皮肉にも魔導姫は、敵に自分に向かう刃を差し出してしまったのだ。

「な、私の、私の存在が消えていくだと……」

 ユリウスが気づいた上位世界。そこに渦巻く膨大な情報には、ファウストが、知識だけである【名無しの名】の魔導を補い、魔導姫アステリアの名前を剥奪させるほど効果を発揮させる。

「貴女が王家の血筋でもあり、ウェルギリウス家の血筋なら知っているだろう。名前を剥奪される意味を。実は、こうして目にするまで、どういうことなのか分からなかった」

 名を奪われるとはどういうことなのか。
 名前は命に直結しているのが魔導士たちの考えであり、名前を剥奪されたユリウスは、徐々に肉体も精神も後退させて衰弱するように病死した。肺炎だった。

 ウェルギリウス家にいたからこそ、ユリウスは【名無しの名】は第三魔法に近い魔導であると気づいていた。そして上位世界には自分たちの名前も情報体として刻まれていることを知った。【名無しの名】は上位世界にアクセスして、上位世界にある対象の名前を壊す行為であるのだ。

 黄金の光に満ちた空間をファウストは見た。
 多くの文字たちが蝶のように、魚のように宙を舞い、群れを成して広大な空間を飛び交う神秘的な世界の中で、確かにファウストは自分の名前が、一匹の鳥のように飛んでいくのを見えた気がした。

 

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