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書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 356

「私は君たちを見くびっていたよ。メレアグロス家なんて、ウェルギリウス家の傍流中の傍流だともね」

 薄く笑うも、アステリアの顔には絶対零度の怒りの感情が渦巻いている。マナのうねりが魔導姫のまとうローブを翻し、怒りの炎のように煽り立てて周囲の空気を凍てつかせたように見せた。
 それはまるで、燃える氷――ありえない現象であるというのに、自分たちの前に立ちはだかる魔導姫の姿は、絶対零度の冷気を吐き出しながら、青い炎をたぎらせる――青バラそのものに見えたのだ。

尊き青バラの血ブルーローズブラッド

 ファウストは、ぼうぜんと呟いた。
 ティアによって否定された王家の象徴を、まさかこの場で見出すことになるとは思わなかった。

「私は油断した。しかも浮かれていたし、自分のことを世界最強の魔導士だと自惚れていた。だから、もうっ」
「――ぐっあ」

 アステリアの声に合わせて、ファウストの身体がぞうきんの如く搾り上げられて、内臓が鈍い音をたてながらねじり上げられる。ゼロの樹木も表皮に無数の亀裂が走り、天井の葉が一気に枯れ果てた。

 このままでは、ヤバイ。

 再び溢れあがるエネルギーの膨張。三点からなる、別次元への介入。ただし、今回は術者二人の命をすり潰す勢いで、術式が展開されている。

 

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