書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 70

 魔王が暴れた500年の暗黒期。
 魔王と魔物たちは全世界を蹂躙し、断種の呪詛【ブロークンチェーン】ばらまかれたことによって各種族の存続を脅かした。血脈と断絶と絶滅を防ぐために彼らが縋ったのが、純血の人間種。寿命が100年以下で能力も平均的であり、なんの取り柄もない種族に思えた彼らは、生殖に異様に特化していた。どんな環境にも順応する生命力と365日24時間も続く途方もない発情期。十月十日(とつきとうか)程度で出産し、寿命が短いゆえに生まれてたった三年で物心がつくとされ、特筆すべきは繁殖と世代交代が頻繁である故か、英雄や傑物が生まれやすい点にある。

 勇者アレンも、魔法使いのアステリアも純血の人間種。
 魔王が真っ先に滅ぼした、古代都市ユピテルも純血の人間が住んでいた街であり、ティアやファウストにとっても父親が純血の人間種であることから、なるべく友好的に接して、どんな思想であろうとも歩み寄るべきだと考えていた。……のだが、考えを改める機会なのかもしれない。

 純血の人間は劣等種。視野が極端に狭く、寿命が短いゆえに無責任で、英雄や傑物が生まれやすいことで自分たちを優性種だと思い込み、多種族を弾圧する。

 そんなどうしようもない種族に、今も尚、世界は依存しているのだ。人間の並外れた繁殖力があるかぎり人手不足は無縁の問題であり、平和になると一気に出生率が下がることから、出生数を維持するために多種族による人喰い(ひとくい)が黙認されている。
 純血の人間は遺伝子の箱舟、そして人外たちにとって最高の食料である世界の担い手なのだから。

 

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