書き出し_休載小説の話をなんとか終わらせよう_アステリアの鎖 44

「あぁ、なるほど。そういうことですか」

 対して、ファウストの方はティアの変心に納得がいった様子だ。

「確かに自分の親に似ていると気づいたら、やる気が失せますね。……そんなに似ていますか?」
「は、はい。若返ったら、ちょうどあなたの顔になると思います」
「そうですか。参ったなぁ」

 そう言って、仕方がなさそうにゆるく笑うファウストは、そっとティアから身を離して恭しくその場で跪く。

「改めて、ご挨拶を。自分の名前はファウスト・メレアグロス……貴女の父、宮廷魔導士(ウィザード)のイーダス・ウェルギリウスとは伯父と甥の関係になります。メレアグロスは母親の姓(せい)で、姫様とは従兄妹(いとこ)にあたります」
「……え?」

 最悪の事態が避けられたのが分かったが、突然あらわれた父親に似た親戚に気持ちがかき乱れた。

「そんなの知らない。聞いてない」
「そうでしょうとも、自分の父であるユリウスとは、かなり険悪な仲でしたからね。父とイーダス様は一卵性の双子なのですが、考え方がまったくの真逆らしく」 
「へ? ちょっと待って一卵性の双子って、そうなるとファウスト殿とわたしは、戸籍的には従兄妹でも、遺伝子的には腹違いの兄妹(きょうだい)になるんじゃない」
「まぁ、そうなりますが。今まで交流らしい交流がなかったですし」

 あまりにもあっさりとしたファウストの返事と態度に、ティアは閉口した。


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