教育的移住のススメ

3年前まで、23区内でも木々が多く自然豊かな街に住んでいた。静かな住宅街のご近所さんには、有名なコメンテーターや作家や芸術家が住んでいて、いわゆる文教地区といわれる街だ。

長女はこの街の公立小学校に入学した。6年生の9割が中学受験をする地域だ。学年が上がるにつれて聞こえてくる進学塾の話。9割受験の波の中で「いや、私は公立行きます!」と長女は言い切れるだろうか。我が家は4人の子どもがいる。全員私立中学に行こうものなら破産である。長女は塾に行きたいと言うだろう。そうするうちに、「行きたい中学」というより「自分の偏差値に見合う中学」に折り合いをつけるのではないだろうか。進学塾でのクラス上下に辟易する日々が来るのではないか。

長女3年生の秋、我が家は都心から50キロ離れた街に家を建てた。長女の教育環境を整えるためにとにかく4年生までに。と移住を決めたらとんとん拍子に場所が決まった。

4年生は恐ろしい学年で、学力差が顕著に出始める。3年生までの幼児教育の貯金を使い果たす時期である。4年生からは努力したもの、勉強の仕方を知っているものが上位に立つ。クラス内でも「できる人」に認定されだすのも4年生からだ。

転校してきた学校は1クラス40人が6クラス、全校で1400人のマンモス校だ。翌年新設校(小中一貫の義務教育学校)が完成するまで、暫定的に入れてもらった。

ここで、長女は「できるひと」と認定される。3年の秋にTOKYOから引っ越してきた、算数が得意な子。体操服が襟付きの子。目立たないひっそりとした長女が初めて脚光を浴びた瞬間である。自己肯定感爆上がりである。

「できるひと」の称号はプライドを育てる。4年生で新設校に移ったが、ここでも「できるひと」のポジションを維持すべく毎日頑張った。

どうやら、各学校の猛者が集まる進学塾があるらしい。ということで入塾テストを突破し、今や6年生。立派な中学受験生である。

え?中学受験を逃れるために移住したのに?

そう、結果的に中学受験である。ただし、地方のトップ校の生徒のレベルの高さ、進学実績に驚かされる。どんな地方にもトップ層はいて、そのトップ層は全国模試でも十分に戦える。しかも娘の志望校は公立だ。こんなコスパのいい受検はない。

来年、次女が魔の4年生になる。2月からは長女と同じ進学塾へ行きたいと言っている。入塾テストは突破した。同じように「できるひと」のポジションを維持しようと必死だ。

移住して加熱する中学受験を俯瞰してみると、学校の選択肢は減るが得るものは大きいように思う。

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