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冬のアサガオ 14

武林「え、なんでお前目の下クマ出来てんの?」

体育祭当日
照らされる陽射しに少しクラクラした
いつもと違うこの胸の高鳴りは
昨夜の寝不足に大きく響いた

女子たちの甲高い声援が僕の頭を強く叩いた

朝凪「倫也くん、大丈夫?」
神田「うん、平気 それよりこの後応援合戦だよ。かばろ」
朝凪「うん!楽しみ」

昨夜僕達は夜12時まで通話をし
朝凪は深く眠りに着けたらしいが
僕はと言うと、朝凪の寝息に興ふ……いや、何故か眠れなかったのだ


(よーい!パァン!)

僕達は今まで練習した成果を遺憾無く発揮した
この数ヶ月の色々ありすぎた思い出を思い出しながら、チーム一同応援を終わらせた。

武林「いやーお疲れ様!みんなよく頑張った!」
佐々岡「武林君もお疲れ様 みんな輝いてたね」
朝凪「うん!お疲れ様!」
神田「次は騎馬戦だっけ?」

僕達は応援合戦が終わった事を惜しみながらも、次の競技に移行した

朝凪「神田君、武林君がんばってね!」
武林「軽く1番目ざしてくるよ」
神田「おいおい、相手3年も一緒だぜ?」
武林「俺らなら行ける」

全く、その自信はどっから……
まぁ、コイツが言ってるとなんとなくできる気がするんだよな

先生「それでは全男子対抗 騎馬戦を開始します」

ピストルが鳴った

僕と武林は別の馬だが、2人とも騎手だ
早速次々と1年が3年に倒されていく

神田「お、おいおい。こりゃ怖すぎんだろ。端行こ。」

僕らの騎馬は、なるべく傍観するスタイルを取った

武林「うぉりゃあ!!」

武林が2年、3年の帽子を次々と取っていく

神田「アイツやべぇな……」

すると目の前に相手の1年が現れた
同じ1年なら!

僕は初の帽子を奪った。もうこれで僕の中では快挙達成だ。

ってあれ?

いつの間にかほかの騎馬が減っていて

僕らのチームは僕と武林
相手のチームは ラグビー部の3年主将の一騎が残っていた

武林「あっちゃあ……神田。死なない事を祈るぜ」
神田「はぁ……しゃーねぇな!」

相手の威圧に突っ込んだ僕たち2人
武林の馬は一瞬にして崩れた

神田「あ、はは……こりゃ負けたな」

朝凪「神田くん!頑張ってー!」

そこからの記憶が無いのは何故だろう

大勢の歓声の中から
何故か朝凪の声がけが鮮明に聞こえた

僕は保健室で横たわっていた

朝凪「あ、神田くん起きたんだ 大丈夫?」
神田「朝凪……?なんで俺寝てんの?」
朝凪「あれ?もしかして覚えてない?」
神田「あぁ、覚えてない。でも大体は予想が着く。あの騎馬戦多分俺が倒れて負けたんだよな」

朝凪「え?神田君、あの先輩に勝ったんだよ?」

神田「え?」

朝凪「あの先輩に勝って、神田君雄叫びを上げたの。その後何故か倒れて、先生曰く多分軽い熱中症だって言ってたよ」

そうか、昨日の寝不足が祟ったか。情けない……

朝凪「かっこよかったよ」

保健室の窓から風が入ってきた
とても心地よくてむず痒い

その風邪でなびいたカーテンと 朝凪の長い髪。
僕はつい言ってしまいそうだった。

彼女のその仕草や声。
その美しすぎて少し憎たらしい存在は
破ってはいけないこの感情の壁を軽々と壊していくのであった。

武林「おーい倫也!無事かー?」

この無限にも一瞬にも感じられた僕らの時間は終わりを告げた。

武林「おお元気そうだな。この後のリレー出られるか?」

神田「あぁ。いける。」

朝凪「え?大丈夫なの?」

神田「大丈夫だよ。さっきの言葉さ、もしまた俺がいい所見せたら、また言ってくれ」

朝凪はぽかんとした表情を一瞬うかべた後
頬を少し赤く染め
頷いた。

ーーーーーーーーーーーーーー


神田「おいおい嘘だろ?」

最後の競技、色別対抗リレー
両色の点数は拮抗していた。

武林「まぁそういうこった。勝つぞ!」
神田「あ、あぁ。」

開始のピストルが鳴る。

五月蝿すぎる応援が僕を奮い立たせた。


リレーの順番は作戦で決められ
僕はアンカーから3番目
武林は2番目を務めた。

幸い、アンカーは3年の陸上部の先輩だ。先頭から離されなければ勝てる。

しかし徐々に先頭から離されていった

この距離じゃ、追い抜くのはキツそうだ。
僕の最高潮まで登った闘争心は徐々に消え始めた。

遂に僕の番が巡ってきた

バトンを受け取り全力で駆ける。

しかし前との距離はほんの少ししか縮まらない

暑い。苦しい。
もっと速く!

割れるほどの歓声の中から届いた特別な声。
なぜ聞こえたのか僕にも分からない

朝凪「神田くん!!頑張って!!」

その美しくも力強い声が僕の背中を押した。

前との距離を徐々に詰める。

あと少し!もう少しだけ!!

人生で1番歯を食いしばった瞬間だった。

その瞬間だった。足に力が入らなくなった。

(やべ……)

僕は勢いよく前に転びそうになったその時

武林「よくやった!!」

僕のバトンを強引に受け取り
武林が走り出した。

足をかなり擦りむいたがなぜが痛みを感じなかった。

僕はただ、武林に声援を送り続けた。

(あいつ、速すぎだろ……)

武林が先頭と徐々に距離を詰める。
およそ5mにまで追いついた。

その後無事、先輩にバトンが渡り
先輩の強烈な追い上げの末、僕達は勝利した。

ーーーーーーーーーーーーーーー

閉会式。僕らは勝利の余韻に浸りながら会場の片付けをした。

朝凪「神田くん!お疲れ様!かっこよかった!」
神田「朝凪……ありがとな。」

こうして僕らの大きな青春の1ページは幕を閉じた。




   次回に続く

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