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「ドラえもん」初のスピンオフ・『ドラミちゃん』/考察ドラえもん⑯

今回は、ドラえもんの妹として有名なドラミちゃんの、一般的に知られていない部分を解説していく。

ドラミちゃんが初登場するエピソードは、「小学五年生」1973年4月号掲載の『ハイキングに出かけよう』であるこれはまずまず有名なお話。

ただ、その前号(「小学四年生」1973年3月号)での次号予告が最初のお披露目であったことはあまり知られていない。この時はデザインが若干今と異なり、ドラえもんが目がハートになって照れている様子も描かれていることから、最初ドラミは「妹」ではなく、「恋人」設定だったのではないか、と言われている。

この予告では、「ドラミちゃんは、奈良県中村由美さんのアイディアです」と記載されている。雑誌の読者公募から選ばれたキャラクターなのであった。

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さて、すぐに市民権を得たドラミちゃんは「幼稚園」などでの再登場を経て、「小学館BOOK」(後に小学館ブック)にて、『ドラミちゃん』として連載されることになった。「ドラえもん」初のスピンオフ作品である。

『ドラミちゃん』は全部で8話描かれた。
その初回『じゅん番入れかわりきのまき』で、ドラミちゃんは未来からやってくる。この回はかなりの変化球で、のび太の遠い親戚というのび太郎が登場して、のび太と入れ替わってしまうという異色の展開で進行する。そしてドラミちゃんは、のび太郎の家に住んで面倒を見ることにするという驚きのラストを迎える。

この回は、当然ながらてんとう虫コミック未収録作品である。

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あとの7作は、全てその後「ドラえもん」の単行本に収録されている。元のお話はのび太郎が主人公なので、周囲のキャラクターも異なって描かれている。そこで、単行本収録にあたっては、主人公をのび太に置き換えるなど、雑誌掲載時から大きな改変が行われている

僕が子供の頃持っていたてんとう虫コミックでは、この改変が中途半端になっているセリフなどがあって、子供ながらに混乱したことを覚えている。現在刊行されているものは、修正が加えられているらしいが、未確認である。

ちなみにのび太郎の世界では、

しずちゃん → みよちゃん
スネ夫 → ズル木
ジャイアン → カバ田

というキャラクターの位置づけとなっている。

ズル木については、なぜか単行本収録時にスネ夫に書き換えされなかったため、この事情を知らない「ドラえもん」の読者は、こいつ誰?という違和感を覚えてしまうことになる。(自分もそうだった)

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ここで、「ドラミちゃん」全8話のタイトルを一覧にしておく。()内は単行本収録時のタイトルとなっている。

①『じゅん番入れかわりきのまき』(単行本未収録)
②『のび太郎 テレビ出えんのまき』(→テレビ局はじめたよ)
③『どこへでも行ける「ふしぎなドア」のまき』(→山奥村の怪事件)
④『ふしぎなキャンデーのまき』(→ウラシマキャンデー)
⑤『ここほれワイヤーの巻』(→地底の国探検)
⑥『海底ハイキングの巻』 (→海底ハイキング)
⑦『公園のネッシーのまき』(→ネッシーが来る)
⑧『とう明人間のまき』(→とう明人間)

全て通して読んだ感想としては、一作ごとのページ数が多く、F先生の思い入れたっぷりのテーマが取り上げられている印象を受ける。③ではミステリー、④は浦島太郎、⑤地底王国、⑥海底冒険、⑦ネッシー論争と、大ネタを繰り出している。

また、主人公となるのび太郎は、のび太より若干勇気があって、勉強家のような感じがする。海底探索にチャレンジしたり、ネッシーついて研究をしたりと、積極的だ。

この中から、次回は『公園のネッシーのまき』を取り上げて、F先生が愛して止まないネッシーの、生存説・不在説の議論をじっくりと見ていきたいと思う。

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