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『耳すま』から、「個性」について考えてみた。

みんな大好き、ジブリアニメの『耳をすませば』。僕はこの作品を公開当時に映画館で見ていますが、確か高校生だったか浪人生だったかで、観たいのに観に行くのが恥ずかしくて、10歳年下の妹を丸め込んで、妹の帯同者という見え方にして、劇場に足を運んだ記憶があります。

耳すまの中身の話をしだすと、5、6本の記事が書けそうなので詳細を割愛しますが、作品の中で、立花隆さん演じる雫のお父さんが、小説家を目指す娘に対して、とても印象深いことを話します。

人と違う生き方はしんどいぞ。誰のせいにもできないからね。

夢にチャレンジすることを認めつつ、相応の覚悟を求める厳しい発言です。作中の雫はまだ中学3年生。それでも彼女はこの言葉に背中を押されて、受験生という立場にも関わらず、自分の書きたいことを書き始めます。

彼女が焦ってこのようなチャレンジをするのは、視線の先にいる天沢聖司君の影響です。彼はバイオリン作りの職人を目指していて、反対する両親を押し切って、イタリアへの短期留学にも挑戦します。

この若い二人の一歩踏み出す様は、なかなかに衝撃的で、この映画を見終わった後、やりたいことも、やれることもなかった僕は本気で焦りました。そして、人のせいにできないくらいの、自分の道を見つけなくては、と強く思ったのでした。


ここで、少し話が遡ります。

僕は高校時代、仲の良かった気の合う友人が4人いました。その後紆余曲折ありますが、今でもゆるく繋がっている仲間です。

彼らは僕からみて、非常に個性的なメンツでした。勉強もできてスポーツもできてユーモアがあって視野が広くておしゃれでいち早く彼女なんかを作ったりして。高いスペックを持つと共に、強い個性を輝かせていました。

僕はなぜかその円に入り、没個性の意識の中、高校生活を送っていたのです。勉強も中途半端だったし、運動もそれほど得意ではなく、外見に気を使うでもなく、彼女もできない・・・。何よりも、自分とはこれだ、というものが見当たらなかったのです。

「耳をすませば」を見た時、その高校での劣等感のような感情が引き摺り出されたような気がしたのです。


僕の大学生活は、そんなことを背景に、自分の個性とは何か、自分に何ができるのか、何をしたいのか、そういう自問自答に飽きくれた日々だったように思います。

でも分かりやすい個性というものは、簡単には身につけられません。そして、何よりも雫のお父さんのいう、人と違う生き方に対して臆病だったような気がしています。

就職氷河期でしたが、普通に就職活動をして、希望でも何でもない会社の内定もとりました。けれどそれでいいのかという思いは残りました。本当にやりたいことは、エンタメ業界でビジネスをする、ということでした。でもそういう業界は門戸が狭く、就職難の頃だったので、定職の口はほとんどありませんでした。

手元にある内定した会社に進むか、やりたいことを追い求めるか。遅まきながら、人生の分岐点が目の前に現れたのでした。


ちなみに僕の就職活動の頃、いわゆる自己分析ブームの走りで、これまでの自分を振り返って言語化するようなことを一生懸命やっていたのですが、そこであることを思い出します。

それは、高校時代の個性的な友人たちと、大学に入った後で集まった時のこと。酔った勢いなのか、自分の個性はどのようなものかと、一度だけ尋ねたことがありました。

その時言われたのは、お前面白いよ、というような単純なことでした。単純な答えでしたが、自分が個性的だと思っている面々に面白いと言われることは、不思議とパワーを貰えることであったと思います。

「俺は面白いヤツ」
自己分析の結果、このバカな一言に辿り着いたのでした。


結局、受かった会社は内定辞退をして、そのまま就職浪人の道に進みます。おそらく、道を外れる、初めての体験だったように思います。

それから20年。脇道に大きく逸れながらも、自分は面白いやつなのだという自己分析を胸に秘め、働き続けています。希望通りエンタメビジネスの仕事に辿り着きましたが、まだまだきちんとした成果を出せていません。やるべきことを多く残していると実感しています。


高校時代の個性的な友人たち。彼らは、大学卒業後、見事に際立ったそれぞれの道を歩み出しました。ただ、今自分が取り組んでいる仕事を冷静に考えた時、彼らと比べて没個性かと言われると、そうではないように思います。

人と違う道を進もう、とかそんなことを考えなくなって、目の前にある道を全力で進んでいたら、いつの間にか個性的なポジションに辿り着いた、とそんな風に思っています。


人と違う生き方はしんどいぞ。誰のせいにもできないからね。

今ならわかります。人と違う生き方はしんどいけれど、やりがいはあるんだと。それは、全部、自分のせいにできるのだから、と。

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