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「一生に一度は百点を…」のび太のテスト奮闘記/考察ドラえもん⑳

のび太にとっては、日々のテストは恐怖そのもの。点が悪ければママや先生に怒られるし、友だちに笑われてプライドも傷つく。0点ばかりののび太は思うのだ。「一生に一度は百点を取りたい」と。けれど、いざ100点を取ってしまうと、それはそれで大変なことになってしまう。そんな、100点の答案を巡る悲喜こもごもをまとめてご紹介!

100点と言えば、まずは有名な『一生に一度は百点を…』から見ていこう。

この話は、のび太の夢から始まる。
天才少年の呼び声高いのび太は、テストではいつも百点。「悔しいなあ、どうしても百点以上取れない」とキザな台詞を吐く。そんなのび太の姿にしずちゃんはうっとり…。

夢ではあるが、やっぱり百点を取って尊敬されたいのび太なのである。

宿題に手こずるのび太に、ドラえもんは「コンピューターペンシル」を渡す。これを使うとスラスラと難問も解けてしまう。調子に乗ったのび太は、ジャイアンやスネ夫の宿題を片付け、しずちゃんのパパの書類仕事もこなしてしまう。

のび太はさらに調子に乗って、この道具を使って、明日のテストで百点を取ろうと画策する。ドラえもんは、「それじゃカンニングと一緒だ」とのび太を追い回すが、「いっぺんぐらい百点取ってみたいよ」と返さない。そして、そのやりとりを物陰から見ていたジャイアン…。

ドラえもんは、そんなのび太に軽蔑の眼差しを向けるのだが、のび太は翌日のテストのときにドラえもんの表情を思い浮かべて、コンピューターペンシルを使うのを止めてしまう。

実は正義の男のび太は、結局不正には手を染めないのである。

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ところが、コンピューターペンシルは、ジャイアンに偽物とすり替えられていた。ジャイアンはそれを使って見事に百点をゲット。誇らしげに父親に報告するのだが・・・。

「いつも落第点のお前が、急に百点取れるわけがないっ。出来の悪いのは仕方がないとして、不正だけはするなと教えてきたはずだぞ!」

と、ジャイアンをボコボコにして、ジャイアンは「百点なんてこりごりだい」とコンピューターペンシルを捨てるのだった。

百点を取るのは夢だが、形ばかり整えても、結局努力の末に百点を取らないと、信用されないのである。

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ということで、今度はテストの高得点を狙うのび太の奮闘を見てみよう。まずは『のび太の0点脱出作戦』から。

冒頭、のび太はママに無言で怒られる。あまりの怒りに言葉が出てこないのである。怒りの原因は、のび太のテスト0点である。ドラえもん曰く、

「今までは五回に一回程の割で0点を取っていたのに、立て続けに四回0点とくれば…」

翌日のテストで何としても30点は取らなくては、と勉強机に向かうのだが、「コンピューターペンシル」を12年ぶりに思い出して、ドラえもんに頼んだりして集中できない。

ドラえもんが行ってしまうと、今度はタイムマシンで未来の出木杉の答案を見に行こうとする。しかし、なぜか出木杉の部屋に未来ののび太が現れ、カンニング作戦を妨害されてしまう。

部屋に戻ったのび太は、仕方なく自分でやるしかないと机に向かう。そんなのび太の頑張る姿を見て、ドラえもんは「時門」を使って時間を引き延ばし、勉強時間を確保してあげるのだった。

結果は見事に65点。大喜びののび太はママにも褒められ、そしてタイムマシンで過去からやってくるのび太にカツを入れに出木杉の部屋へと向かうのだった。

百点ではないが、努力の結果による達成感に更けるのび太の姿は感動的である。


続けて、『具象化鏡』を見てみる。

こちらは既に勉強とテストが終わったところから始まる。のび太はやる気も無く寝転がっていると、ドラえもんが注意に来る。

ドラ「確かに君は頭が良くない。それならそれでいっそう勉強が必要ではあるまいか」
のび「勉強ならやったさ、珍しく。今日のテストに備えて」
ドラ「フーン・・・それで結果は?」
のび「おそらく0点。もう無駄なことは止めた。どーせ僕なんか・・・」

と、すっかり気落ちしているのび太なのであった。

この話はその後、「具象化鏡」という言葉の表現を本当のように見えるようにする道具で遊びまわる展開となる。例えば、耳が痛い言葉を聞くと、本当に耳がガンガン痛くなる、という具合である。

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ところが、色々あって落ち込んでしまったのび太は、空き地で「世の中真っ暗」な状態に陥ってしまう。そこに先生が現れて、のび太に話があるという。のび太はどうせ怒られると身構えるのだが、テストが65点だったという喜ばしい報告なのであった。

「希望の光が差し」、「天にも昇る心地」で空を飛びまわるのび太であった。

のび太はどうやら、頑張りさえすれば65点は取れる実力があるということなのだろう。他にも『人間カメラはそれなりに写る』でも、やはり65点を取っている。この時は、答案を囲んで記念写真を撮ることになるのだが…。


さて、そんなのび太が、遂に100点を取る日がやってくる。それが、『な、なんと!! のび太が百点とった!!』である。

冒頭から百点の答案を手にするのび太。

「夢じゃないか・・・。何べん見ても百点だ」

放課後のび太は先生に駆け寄ると、

「いやわしも目を疑ったがね。何度調べても百点なんだ」

と、奇跡を喜ぶ二人。

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これをみんなに見てもらいたいのび太だが、ジャイアン・スネ夫には信じてもらえず、しずちゃんには話をきちんと聞いてもらえないままに、

「人間の値打ちはテストの点数だけで決まるものじゃないのよ。のび太さんは優しくて素直な良い人だわ。テストが0点でもいいじゃない。力を落としちゃダメよ。この次頑張ってね」

と一方的に励まされるのであった。

さらにママに見せようとするのだが、テスト=悪い点だと決めつけられて、今朝から頭痛がするからと、見るのを拒否されてしまう。そしてドラえもんには、ついにカンニングをしたか、と逆に疑われる始末だった。

ついに「あんまりだ!」と泣き出すのび太。そして不貞腐れて寝転がる。

「僕なんか百点取るのが間違いなんだ。昼寝して0点取ってりゃいいんだよ!」

と深く深く傷つくのび太であった。

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この後、ドラえもんが「ピーアール」という広報用ロボットを出して、のび太の百点をPRしていく、という展開となる。

このPR作戦は、なかなか考えられたもので、①マスコミの報道、②オピニオンの発言、③口コミ、といわゆる広報・宣伝活動のお手本のような施策を講じて、最終的には国民の休日に制定されるまでに至る。

大騒ぎに発展したため、全てを取り消し、のび太は答案を机にしまっておくことにする。とそこに、ママが現れ、しまおうとした答案を見せろと近づいてくる。すると、それは百点の答案! 思いがけない喜びにママは涙ぐみ、額縁に入れて飾ろうと言い出すのだった。

全話を確認したが、のび太が百点を取ったのは、これ一回のみだった。まさしく、一生に一度の百点、だと言えるだろう。

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さて、百点を取って自慢をしたいのはスネ夫も一緒。ということで、次に『大ピンチ! スネ夫の答案』を見てみよう。

この日はテストの答案が返ってきた。スネ夫は久しぶりの百点を取って、早速自慢をしようとする。ところが、出木杉としずちゃんが、100点と95点という結果を讃えあっているのを聞いて、ジャイアンの機嫌が悪くなっている。彼は15点だったので、イライラしているのである。

そしてジャイアンはのび太にテストの点を聞く。すると・・・、

のび「思ったより良かった」
ジャイ「良かっただと!?何点だ!?」
のび「十点!!」
ジャイ「お~し、それでこそ友だちだ!!」

低い点で慰めあう二人。出木杉としずちゃんと正反対の連帯感だが、スネ夫はそのやりとりの中で、自分の百点を言い出せなくなってしまう。

それでも何とか自分の百点を知らしめたいスネ夫は、ひと芝居打つ。「この答案を持っては家に帰れない、裏山のどこかに埋めるので、後をつけないで欲しい」とのび太とジャイアンに告げて行ってしまう。

さては5点か0点かと、のび太とジャイアンはスネ夫の後をつけていくのだが、途中で先生に見つかってお説教を受けたために、スネ夫の答案の隠し場所が分からなくなってしまう。

そこで、のび太はドラえもんに、紙を拾うための道具「ペーパーレーダー」を出してもらい、スネ夫の答案を探すことにするのだが、ゴミの紙が山のあちこちに散らばっていて、紛れて見つからない。

自分の答案を見つけて貰えないスネ夫は次なる手として、答案の隠し場所を暗号で伝えようとするのだが、のび太たちの頭脳では解読はできないのだった。そこで、ドラえもんに「暗号解読機」を出してもらい、裏山の千年杉の根元に埋められていることを掴む。

その頃、スネ夫が答案をいつまでも見せないので、スネ夫のママが0点だったのではと疑り始める。仕方なく、スネ夫は答案を見せるために、ママと一緒に千年杉に向かう。

のび太とジャイアンの様子を怪しんだドラえもんは、二人の目的を察知し、「スネ夫が必死に隠そうとしているものを暴くとは友達ではない」と涙ながらに説教し、のび太とジャイアンはそんな自分たちを恥じるのだった。

そこに、スネ夫がママを引き連れ千年杉に現れる。隠し場所を白状させられたのだと勘違いしたドラえもんたちは、「秘密書類やきすて銃」という物騒な銃火器を出してきて、埋められた答案をスネ夫とスネ夫のママもろとも、豪快に吹っ飛ばしてしまう。

「ばんざい、スネ夫の秘密は永久に守られた」と喜ぶのび太とジャイアン。スネ夫の百点は永久に葬られたのだった。

100点を自慢したいけれど、真正面から自慢はできないし…。まさしくテストあるあるの悲喜こもごもという感じである。

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さて、ドラえもん以外にもテスト百点にまつわる話があるのでご紹介したい。それが、1976年に学習誌3誌で半年連載された「バウバウ大臣」という作品の『大ちゃんテストで百点とる』というエピソードである。

詳細は省くが、のび太のような落ちこぼれの大ちゃんが、やはり思いがけず百点を取るのだが、周囲の人たちに中々信じてもらえない。ようやくママにわかってもらうのだが、はしゃぎすぎた結果、屋根の上で修理をしていたパパも驚いてママの上に落ちてきてしまう。

災難を目前にした大ちゃんは、成績が良くなっても良いことがないので、勉強をしないようにしようと、ゴロゴロしてしまうのだった。

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結局100点を取ることは最終目標ではなく、月並みだが、100点を目指して勉強することが大事なのだと思わせる。普段の努力が無いまま結果を出しても、カンニングと疑われてしまうのだから・・・。


参考文献:
『一生に一度は百点を…』

「小学六年生」1973年12月号/藤子・F・不二雄大全集1巻
『のび太の0点脱出作戦』
「小学五年生」1985年7月号/藤子・F・不二雄大全集14巻
『具象化鏡』
「小学六年生」1986年3月号/藤子・F・不二雄大全集13巻
『な、なんと!! のび太が百点とった!!』
「小学六年生」1981年6月号/藤子・F・不二雄大全集9巻
『大ピンチ! スネ夫の答案』
「小学三年生」1982年9月号/藤子・F・不二雄大全集13巻
「バウバウ大臣」『大ちゃんテストで百点とる』
「小学二年生」1976年7月号

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