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1日8時間労働は時代遅れ?

こんちは!副業社労士まさゆきです
日本の法定労働時間は1日8時間、1947年労働基準法で制定されて以来60年以上見直されていません。

1日8時間労働は、19世紀後半、社会の工業化が進む中「劣悪な環境で働く工場労働者の健康」と労働生産性がバランスする労働時間を模索し決定された労働時間です。(添付ブログ参照頂けると幸いです)。

人は何故1日8時間働くのか:36協定が労働生産性向上を妨げる一因|副業社労士まさゆき (note.com)

1日8時間労働が制定された1947年「工場の生産工程は殆ど手作業」「発注書は郵送」「決算書は経理が手計算作成」「顧客と営業の会話は訪問」でした。2024年の今「工場生産は自動化が進み省力化(ホワイトカラー労働者数はブルーカラーを超えたそうです)」「発注書はFAX・電子化」「決算書はシステムが作成」「顧客と営業の会話はメールやTEAMS」です。

私が入社した1988年、携帯電話もパソコンもありませんでした。外出後会社に連絡するのは夕方の定時連絡のみ。顧客との連絡は電話やFAX・訪問、時間がかかります。資料は電卓で売上等を計算、手書きレポートは時間がかかります。2024年と1988年を比較すると、体感では仕事のスピードは3倍、精神的負担も3倍です。精神的負担増が精神疾患増加の原因となっています。2002年から2017年の15年間で、精神科患者数は258.4万人から419.3万人と1.6倍になりました。

精神的負担に耐える為、労働者は“手抜きし自衛”します。私の見る限り、1日8時間全力で仕事できる人はいません。雑談、席で休憩しながら仕事しています。だらだら長い会議も上司が休憩したいだけかも知れません。
こんな労働環境では労働生産性向上など夢のまた夢…労働環境の変化に対応し1日8時間労働も見直すべきではないでしょうか。

【最適な年間労働時間は何時間か?】
年間労働時間と労働生産性には負の相関があると言われます。2023年OECD統計では、日本の正社員年間労働時間は2,000時間(年間労働日数240日だと8.3時間/日)、世界平均1,742時間を上回ります。労働生産性85,329ドルは世界31位(2022年OECD統計)「長時間労働で労働生産性が悪い日本」です。

「産業保健21」で厚労省労働基準局の神ノ田さんが「年間労働時間と労働生産性の負の相関」を紹介しました。


産業21-94号Web.9.13.indd (johas.go.jp)

神ノ田さんは、労働生産性が最大となる年間労働時間を「1,215時間、1日5時間労働(年間労働日数240日)」と算出しています。1日8時間労働は長すぎるようです。

【Slackの調査結果:1日8時間の労働効率】
コミュニケーションアプリのSlackが2023年に米国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国の10,333 人の労働者にアンケートを実施、1日8時間の労働効率を明らかにしました。

調査で明らかになった、残業と生産性の関係についての最新の知見 | Slack

・1日8時間中生産的に過ごせる時間は 70%(5.6時間)⇒神ノ田さんの1日5時間に近い
・勤務中定期的に休憩する労働者の労働生産性は13%高く、休憩しない労働者の燃え尽き可能性は1.7倍高い

【「週4日勤務」実験】
1日8時間労働と若干ずれますが…世界では「週4日勤務」の実験が始まっています。

2022年6月~12月、英国企業61社が週4日勤務の実験を行いました。「労働者は生産性を100%維持、企業は週4日の労働時間に5日分の給与を支払う」前提での労働生産性と労働者エンゲージメント調査結果は、
・労働生産性は維持され、会社の売上に変化はなかった。
・労働者エンゲージメントは改善(病欠は65%減少、71%の従業員の燃え尽き状態が抑えられた)
と週4日労働でも労働生産性は維持され、労働者エンゲージメントは向上しました。61社中56社は週4日勤務を継続、18社は恒久的な導入を決定したそうです。

実験ではデメリットも報告され、今後の制度拡大へ模索が続いています。
・救急サービス、公共交通機関等週7日勤務が必要な業界には馴染まない
・週5日勤務を好む労働者もいる(1日6時間×週5日勤務の選択肢も必要:筆者注)
・コスト増、人手不足が問題になる可能性がある

実験はベルギー、ニュージーランド、アイスランドでも行われ、同様の結果が出ています。

世界的な「週4日勤務」の試みが導き出した結果 | 世界経済フォーラム (weforum.org)

【日本では?】
日本企業も週4日勤務を検討していますが、「1日8時間×週4日勤務に対し給与は20%減額」「1日10時間×週4日勤務で給与据え置き」が前提です。「多様な働き方の提示」が導入目的なのでしょう。労働生産性向上の観点からも是非検討を頂ければ…

ではまた次回


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