見出し画像

看護師はヤンキーなのか?

夫はエンジニアをしているが
結婚前から知り合いにポツポツ看護師がいる。
妻である私も看護師で、私の友人も
看護師が多い。

夫に仕事でのエピソードや同僚のを話をしていると
「看護師の世界ってヤンキーぽいよな。」と一言。

私もそう思う。

ちょっとヤンキー的な威圧感と体育会系のあの独特な感じ。

看護師にはわかるあの感じ。


集中治療室に配属になった。


先輩たちは見た目にも気が強そうな人が多くて
実際性格もかなりパンチのきいた人が多かった。
これもあるあるだが、集中・救命にはなぜかこういう人が集まる。笑
この病院では特にキャラ立ちした人がこの1つの病棟に集まりすぎて
この病棟だけ異常に人が足りなかった。


研修医に厳しい


だいたい先輩達は研修医たちにタメ口だった。
その病棟に10年以上いる大御所看護師ともなれば医者よりなんでも詳しい。
私も「プチドクターになれ。」と指導を受けていた。

だから段取りが悪い、鈍臭い研修医は結構キツく当たられる。

一方、血ガスや点滴などを看護師が言う前に処方できる医者は研修医であっても「やるやん。」と一目置かれ、先輩のお気に入りになれた。

医者にとってもかなりシビアな世界である。


恐怖の朝


その病院では毎朝、看護師全員で円陣になって病態生理できているのかチェックがあった。
この時間が本当に恐ろしかった。
先輩はこの時間の恐怖に耐え切れず嘔吐したと話ていた。


私も毎日動悸が止まらなかった。

「今日の患者さんはこんな状態なので
こんなリスクがあり、
こんなことに気をつけて観察します。」
と言うことを一人ずつ発表するのだが

その日のリーダーがそれに対して指導を入れることになっていた。
「心筋梗塞の#1梗塞と#2梗塞の違いは何?どんな不整脈が起きやすいん?」と結構高度な質問がとんでくる。

この時メモをみることは許されない。
先輩の視線が怖い。
全員の前で口籠り、顔がほてる。
「前も1年目でおんなじこと言われてたけど情報共有してないの。」
と茶々を入れていくる先輩もいる。
勉強したのに、あれあれ、なんやったっけ??!と脳内パニックの私。

1年目が言えないとなると、じゃあ「次3年生はさすがに言えるよな?」となる。

言えなかったこと、3年生にまで負担をかけていることに胃がどうにかなりそうになる。

こんなことが3年間、毎日繰り返しあった。
代々この病棟ではこれをしてきたそう。

あまりにストレスが高すぎるので、退職するときに
「全員の前であれをやるのはやめた方がいいです。」と師長に
言ったら個別質問になり、全員の前での吊し上げの伝統は
無くなったときいた。


就寝時間のAライン挿入


「あの人Aラインとるから準備して」と緊急でAラインの挿入のため、あたふたしながら介助に入っていたところカーテンが突然あいた。

「なあ、Cさんの血糖測定まだなんちゃん?それ誰かに頼んだん?誰かやってくれるとか思ってんの?」とすごい圧力、そして静かに先輩に言われた。
夜22時の血糖測定はそうだ、まだだった。
急いで患者さんのそばに行ったら、すでにその先輩が測定していた。
「自分の患者やで。責任持ちや。」と。



清拭中のこと

”ガタン”と救急カートをカーテン越しに動かす音がした
「この滅菌の期限切れてんやけど。
1年目に救急カートの点検の仕方教えたの誰??」と言っている。
私に教えたのは目の前の先輩だった。
先輩も冷や汗で前髪が濡れて、耳が真っ赤になっている。

「これ〇〇やん。」とサインした私の名前が聞こえる。
私の前にいた先輩がうわ、やばい。
と言う顔をしてカーテンの外に出ていった。
「ちょっといい加減に1年生に教えんの辞めてくれる。」と小声で怒られている声が私にも聞こえてくる。私も泣きそうになった。

意気消沈して戻ってきた先輩とはその後無言で清拭をした記憶がある。


記録に時間のかかる私。

日勤が19時に終わるはずだが、22時の消灯時間になってもまだ記録が終わらなかった。
記録もちゃんとやらないと、抜けがあったら
また怒られると言う恐怖に支配されすぎて
集中できず、時間だけが過ぎる。
一日中緊張しているため、全身もバキバキで
肩から腕がピリピリ痺れる。

そんな状況でも夜勤の先輩は容赦ない
「まだやってんの?何をそんなに時間かかってんの。」
と言った後、消灯だからと私がいる場所も電気を消して行ってしまった。
PCの画面の明かりだけになった部屋の中、後ろから
「あの子まだ残ってんの?」と言う声にまた体が固まりそうになった。

「もう泣きたいわ。」と思ったが、なんとか回らない頭を気力だけで回し
その日の記録を書き終えた。
ナースステーションにいる夜勤の先輩達にできない後輩レッテルを貼られていることをひしひしと背中に感じ、不器用な自分を責めながら休憩室に戻った。

誰もいないはずの休憩室の中に一緒に日勤をやっていた先輩がいた。

「あんた、もう終電間に合わんやろ。(自転車の)後ろ乗り。」と言う。
ほとんど何も話さないその先輩は
自転車の後ろに私を乗せて、駅まで送ってくれたのだ。
普段から淡々と仕事をこなす美人な先輩だった。
待っていたことに対しても特に何も言わなかった。
ただ「お疲れ〜」と改札に向かう私に手を振って送ってくれた。


パワハラ

今時こんな病院だと「パワハラやん!」と言う人もいるだろうと思う。
私も厳し過ぎた毎日で人格が変わるくらいの衝撃を受けたので
パワハラだと思っている。

3年後に他の病院に転職して、
あの病院が異常だったことはよく理解できた。

でもメリット・デメリット
両方ある
と他を経験してみて感じることがある。


看護師は人の命を扱う仕事で、まして集中治療室は一瞬の判断が事故につながるリスクがある。

威圧的でないやり方で、看護師を教育する方法はいくらでもある。
と言われるだろうし、今となってはそちらが主流。
「後輩には優しく教えてあげましょう。」と言うことが当たり前になっていることも理解している。

だが、
人間の性質上なかなかそれでは育たないようにも感じている


私は最初の病院で出会った先輩達を結構尊敬している部分がある。

救急車で搬送されてきた患者さんのレントゲンやCT画像を見て、
「ああ〜これは緊OPEやな、準備しよ。」
「これ水たまってんな。」
と医者並に画像診断をして話すことができる看護師がわらわらいた。

まさにエキスパートという感じがあった。

一方新しい病院では
「わかんないです。」「え?そうなんですか」
と何もわからないまま働いている看護師の後輩達を見ると、
これで本当に良いのか?と思うのだ。
優しく、優しく。
そうすれば看護師は病院に長くいてくれるだろうが
看護師としての専門性はどんどん失われている。


患者さんにとってはどちらが良いのか?

私も病院が変わったことで
一気にタイムスリップしたかのように
病院の教育方針が変わって戸惑ったのだが
厳しい、きつい、威圧的な、そういうことが
看護の専門性を磨いてきた歴史もあるのではないかな〜とふと思う今日
このごろだ。

なんでもメリットデメリットがあるが、
ヤンキー体質の先輩看護師の良さもあることを
ここに書いておきたいと思った。













この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?