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翻訳研究者が語る「基礎研究の社会的意義」

どうも!シェアスタッフのゆうすけ(@hyusuke59)です。

前回の投稿にて、としちるさんが「学問の社会的意義」について問いました。それにシェアスタッフが答えてゆく企画、第一弾目はゆうすけによる「翻訳研究者が語る「基礎研究の社会的意義」」です。

学問とは

さて、「学問の社会的意義」を考える上で、この「学問」と「社会」と「意義」をきちんと定義してみたいと思います。

Googleにて「学問」と検索すると以下の定義が書かれていました。

学び習うこと。学んで得た知識。科学や哲学など、知的活動の総称。

学び習うこと。それは自分にとって新しい情報を吸収することです。つまりインプットです。それ通して「学んで得た知識」のことも学問と呼ぶそうです。

二つ目は「知的活動の総称」。研究はインプットよりもアウトプットが主体です。学び習ったことを自分の頭で考え、検証し、伝えることを研究とすると、自分の頭と心で考える主体性(情報を鵜呑みにせず問い続ける心を持つことも)が必要という点は一つ目の定義と大きく異なるところと言えます(もちろん、学習でも必要になる場面はあります)。

そして「学び」と「研究」は分断されたものではなく「知識のサイクル」の中でつながっています。蓄積された知識から得た「学び」をもとに、理論的な思考・検証を行い、新たな発見ができます。その発見がまた別の1ピースとして膨大な知識の上に蓄積され、また他の発見に繋がっていきます。

社会的意義とは

「社会的意義 定義」と検索しても、それらしい定義は見つからなかったので、単語をひとつずつ検索してみました。

Googleによると「社会」とは

(人間が)集まって生活を営む、その集団。

この定義では、その集団の大きさが考慮されていません。としちるさんの言葉を借りれば「親と子の関係」も最小単位の「社会」と言えるでしょう。

そして意義とは

行為・表現・物事の、それが行われ、また、存在するにふさわしい積極的な(すぐれた)価値。

のようです。「存在するにふさわしい積極的な」というのが、ただの価値と大きく違うところでしょうか。

これら二つの定義をまとめると、社会的意義とは「人の集団のための、存在するにふさわしい価値」ということですね。

ではどのように存在するにふさわしいと判断するのか。ここが難しいところです。

1つの指標となるものに「恩恵を受ける人の数」が挙げられますが、その具体的な数を示すことは難しく、どこまで含むかという議論もあります(予想することはできるかもしれません)。

研究の社会的意義とは

学問を二つ目の「知的活動の総称」と定義したうえで、どのような社会的意義があるのでしょうか?

まず、研究者それぞれは自身の研究の意義は明確にもっているはずです。

僕の研究「字幕翻訳における機械翻訳の可能性とその応用」では、「コストと供給が原因で未翻訳であるネットコンテンツの多言語化を機械翻訳で可能にすること」が社会的意義と言えます。多言語化することでコンテンツが文化をまたぎ、異なる文化背景を持つ人同士のコミュニケーションを促進できます。

これは応用研究に当たります。応用科学とは実用的な成果を目指して行う研究のことです。同時に基礎研究というものがあります。これは事象を論理的に説明・証明するものです。「実用」の糸口として、理論的根拠となる基礎研究は応用研究にとって肝であり、必要不可欠なものです。

僕の研究は字幕翻訳の規範から自動翻訳文を評価し、前編集(原文を書き換えること)を通して訳文を改善するというものです。

これには「ファンサブ(アニメやゲームなどのファンが無償でつける字幕)の特徴を記述」だったり、「字幕視聴者の意識調査」など、いまの研究を基礎から支える参考文献があるわけです。これらなしでは、いまある光景は見えていなかったでしょう。まさに僕らは「巨人の肩の上に立って」います。

応用研究と基礎研究の違いはそれだけではありません。

応用は成果が実用的がどうかで評価され、マネタイズも容易であり、直接的です。対してお金にならない基礎研究は、それを参考文献とする応用研究が成功して初めて役に立ったと間接的に(世間からは)認められるわけです。

実際に、基礎研究を行う時点でその研究が「役に立つ」のかどうかなど(予想はできても)わからない場合がほとんどでしょう。しかし、実用的なものを目指すにはまず明確な根拠が必要であり、それなしでは博打と言わざるを得ません。

メモ:だからと言って、自分の基礎研究の意義を説明しなくてもよいというわけではありません。予想できる意義を伝えることはコミュニケーションである研究の重要な要素です。

このように基礎研究は「参考文献」という形で研究者の大いに役立ちます。ある応用研究が実用的であり、それが社会的意義があるとするならば、その根底にある基礎研究も社会的意義があってしかるべきです。

哲学も、自分の考えや思考を整理するという意味で、アカデミアだけでなくすべての人の助けとなるでしょう。

アカデミアが伝えなければいけないこと

近年、政府からの運営交付金が着実に減り、科研費の割合が増えています。そしてその科研費の使い道をより透明化させようという動きがあるように思います。

運営交付金と異なり科研費はその目的を明示的に伝える必要があります。もとは税金なわけですから、世間にも伝える努力をしなければなりません。

応用研究は特に問題ないでしょう。実用的成果は理解しやすいからです。問題は基礎研究です。研究の根幹と言える基礎研究の重要性をアカデミアはもちろん、それ以外の人にも忘れさせてはいけません。

これがシェアスタが取り組む「サイエンスコミュニケーション」と呼ばれているものです。

おわりに

僕はこれらの危機感を持ってシェアスタに携わっています。

研究者はお先真っ暗だとよく言われています。
しかし僕はポジティブにこの問題に取り組んでいきたいと思っています。

まだまだ未熟な僕ですが、これからの未来を一緒に考えるチームとともに切磋琢磨できること、とても幸運に思います。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
ゆうすけ(@hyusuke59)でした。それでは!

あわせて読んでほしい!

ACADEMIC CAMPの予習としてとしちるさん(@ture_tiru)に勧められたものですが、現状の大学改革を概観できる素晴らしい本だと思います。僕の投稿を読んで、少しでも興味が湧いてもらえた方はこちらを参考にしてみてください!

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—あそび、ゆらぎ、むすぶ。—
Share Study β 平岡 ゆうすけ
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