見出し画像

ハクナマタタの十日間

鳥取県大山の「アフリカの風 ハクナマタタ」に来て十日が経った。
目的は、このゲストハウスでのワーホリである。
国内でワーホリ?と思った方もいるかもしれない。私も最初はなんのことかと思ったが、どうやら人口の少ない県が若者を呼び込むために助成金を出して運営しているプログラムらしい。ちなみに鳥取県は人口が一番少ない県なのだそう(「一番減少」だったかも)。

このゲストハウスは名前の通りアフリカの村を再現したような場所で、写真のようにウブンズタワーやマサイ族のおうちがあったり、外も中も至るところにアフリカ的装飾が見られたりする。

私がここを知ったきっかけは、旅好きが集まる祭典、バックパックフェスタ(通称BPF)でア福リカのKAKAとあかちょがゲストとしてロビートークしているのを見、興味を持ったためである。バックパックフェスタやア福リカについてはここでは一旦割愛するが、特にBPFの方はいずれ書くかもしれない。

来て最初に驚いたのは、海の近さである。ハクナマタタの家から歩いて1~2分のところに、もう日本海が広がっている。内海なので波は比較的穏やかで(実家が海から遠いため、そもそも海が荒いとか穏やかとかいう区別もつかないのであるが)、晴れた日は綺麗な夕陽が見れるため、内陸出身者としては新鮮で嬉しい。ちなみにここまではヒッチハイクで来たが、大津サービスエリアで乗せてくれた人の良いおじさんもここまで来て「こんなところにゲストハウスがあるのか!?変なところで降ろすわけにもいかないし、僕が見てくるからここで待ってて」と言って確認しに行ってくれたくらい、海に近くて人の気配もあまりしないところなのである。

二つ目に驚いたのは、ここの生活のオーガニックさと自給自足である。オーガニックさという単語はおそらく存在しないだろうが、どの言葉を用いるのが的確なのか私にはまだわからないので、ここではこう表現する。

私はトイレ後、出たものが何であっても必ず手洗いにせっけんを使うことをポリシーとしていた。しかしここでの初トイレ後、管理人のKAKAにせっけんはどこかと聞くと、ここでは基本何も使わずに水だけで洗うか、コーヒーのかすもしくは紅茶の茶葉のかすを使うと言われた。灯油などべたべたしたり相当汚れた場合は食器兼手用の無添加せっけんを使う。最初は衝撃を受けたが、慣れてしまえば土いじりをしたあとや動物に触ったあとでも水で洗うだけで平気になってくるから不思議だ。

自給自足というのは、海でとってきたわかめやアメフラシなどの海洋生物、ぺんぺん草やカラスノエンドウなどの野草を食材にするからである。都会育ちなため全く思いもよらなかったが(東京寄りの千葉なので都会育ちと言っても過言ではない)、家の近くの海でとれたものは倫理的に食べても問題ないそうである。野草も、素揚げやおひたしにしたりお茶として飲んだりすることもできる。
私は一週間とちょっとで、酸葉(すいば)、踊子草(おどりこそう)、カラスノエンドウ、ぺんぺん草、スギナ、ミントなどが見分けられるようになってきた。柿の新芽と栗の新芽の区別はまだ難しい。

ここでは最近トマトや鷹の爪などの種を蒔いたところなのでまだまだ食べるまでには時間がかかるが、オーナーの知り合いの農園でアルバイトした時に野菜払いという形で得ている。

他にはお醤油やみりん、料理酒、日本酒(これは普通に飲む用)などの調味料系は、醸造アルコールやら水あめやらが入っていないきちんとしたものを選んで買っているようで、そういったものに全く気を払ってこなかった私としては軽くカルチャーショックであった。

またコンポストもやっていて、卵の殻やら野菜、魚の生ごみやらは朝まとめてコンポストに入れるか鶏のエサにしている。
それ以外のごみは、缶や瓶以外はまとめて燃やしている。こういう田舎では市役所に届けを出さない限りごみ収集車が回収しに来ないそうであるし、各家が小さい規模の火で燃やした方が、クリーンセンターなどで大規模に燃やすより地球に良いらしい。

ここで居心地がいいなと思う理由のひとつに、アフリカンタイムで動くことがある。管理人がアフリカ的幸福を唱えている人で、アフリカに染まっているというかもはやアフリカ人といっても過言ではないような見た目や行動をするため、ハクナマタタの中の時間の流れ方もアフリカ流なのである。なのでたまにアルバイト等で時間通りに起きなければいけないときは「ジャパニーズタイムだから気をつけよう」となる。

他にも、これはハクナマタタに限らず他のゲストハウスでも共通することかもしれないが、まったく違う出身や境遇の人、または逆に似たような趣味嗜好を持った人と共同生活をすることで、新たな知識を得たり、単純におしゃべりが楽しかったりする。私は千葉では実家暮らしなので両親と三人で暮らしているが、日々変わった出来事が無い限り話すこともなく話し飽きてしまう。しゃべりたい欲を満たすために友達に電話をしても、皆大学院やら仕事やらで忙しくて出てくれないのである。以前はそんな、一人でひまを持て余したときは仕方ないのでアマプラなどでコナンを見ていたのだが、ここハクナマタタでは誰かしらが近くにいるため、いつでもおしゃべりに興じることができる。
おしゃべり好きな私としては大変うれしい環境である。

以上、ハクナマタタに来てからの十日間を簡単に振り返ってみた。振り返りというより日常生活の紹介のようになってしまったが、ここに来てからの自分の変化等についてはまた追い追い書こうと思う。
とりあえず、ここに興味を持って、鳥取の大山まで来てくれる人が増えればいいなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?