龍太郎と高橋製菓
葬儀とお通夜が執り行われた。
参列者で肉親は10歳の息子、龍太郎ただ1人だった。
妻は龍太郎が生まれて間もなくしてすぐ離婚。
両親はすでに他界している。
そのため、龍太郎の父、仁(ひとし)の葬式、お通夜に参列していたのは、会社の関係者ばかりだった。
焼香して手を合わせる参列者をただ、ひたすらにみていた。
あの光景が1週間ほど経った今でも脳裏に焼き付いている。
父、仁は和菓子屋を経営していた。
一代で自らの手で道を切り開き、年商100億の会社にまで成長させた。
こんな時代に、和菓子屋というと時代錯誤な気もするが、革新的な和菓子を次々に発案し、それが飛ぶように売れた。
中でも看板商品の揚げまんじゅうアイスは連日の大ヒットで、店には長蛇の列が続いた。
そんな中で、翌る日急に父は倒れ、その日のうちに心筋梗塞で亡くなった。
従業員が見つけて、救急車を呼んだ頃にはもう手遅れだったそう。
会社の倉庫で見つかったそうだ。
35歳の若さだった。
父が亡くなってまもなくして、父が書いた遺書が見つかった。
急性心筋梗塞だったのにも関わらず、遺書が作っていたことに驚いた。
今思えば、倒れる前から体に異変があったのかもしれない。
10歳だった私は、気づく由もなかった。
肝心の遺書に書かれていた内容が、
10歳の息子、龍太郎に高橋製菓の社長職を世襲するという内容だった。
そんな馬鹿げた内容を見て、社員の大多数は辞めた。
そこからというもの、龍太郎は小学生社長という異例の役職につき、経営をしていくことになる。
この話はそんな龍太郎と高橋製菓の物語である。
(※この話はフィクションです)
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