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【Focus】インシュアテックの申し子 アリババ傘下の衆安保険が好調の要因①

衆安保険という今中国で非常に注目を浴びている損害保険会社があります。
この企業のユニークな点はアリババを筆頭に、中国平安保険、テンセントというメガIT・金融企業が株主となっていること、そして中国初の完全オンライン損保(オフラインで販売網を持たないこと)が挙げられます。
以前の記事でもお届けしましたが、衆安保険が2020年度上半期業績を発表し、その好調ぶりから同社の株価が大きく上昇しています。
今回は好調の要因はどういった部分にあるのかを、衆安保険公式サイト上のプレスリリース、及びその内容を深掘りした中国現地の記事からピックアップしお送りします。
(筆者が引用&翻訳・要約)
(記載の内容は転載不可でお願いします)

■衆安保険2020年度上半期業績
 中国初のオンライン専業損保である「衆安保険」、その衆安保険が8月26日に発表した上半期業績は以下の通り非常に好調でマーケットを驚かせた。
 ⇒収入保険料総額:約67.7億元(=約1,052億円) 対前年+14.7%
 ⇒純利益総額 :約4.9億元(=約76億円) 対前年+418.8%
  (内 保険事業利益 :約6.2億元(=約96億円) 対前年+94.6%)

衆安上昇率2020H1
 保険料収入総額は業界で12位となり、「約15%」という進展率は上位12企業中トップをマーク している。(業界平均の進展率は4.38%)

損保進展率ランキング 2020H1

 純利益総額の対前年度からの大幅な増進が目立つが、この要因の一つとして保険事業の経営指標に改善が見られ、給付率が前年同期の63.9%から56.6%と7.3ポイント改善し、コンバインドレシオ(支払保険金+事業費等の保険料収入に占める比率)も前年同期の108.3%から103.5%へと4.8ポイント改善していることが挙げられる。

■トップラインを牽引する「健康エコシステム」 ーオンライン病院
 話をトップラインに戻すと、衆安保険の保険商品は健康・生活消費・消費金融・自動車・旅行&航空の5大カテゴリーで構成されているが、この内健康カテゴリーの保険料収入は前年同期比115.6%増の30.5億元(約470億円)で保険料収入全体の内最大の比率を占めることとなり、その比率も前年同期の24%から45%へと急拡大している。

衆安エコシステム変化

 好調な健康保険ビジネスを支えるのが「健康エコシステム」で、衆安保険のオフィシャルホームページでは「中国初のオンライン専業保険会社として、保険・保障に関するユーザー教育に力を入れており、医療サービスも積極的に展開し、クローズドループ(自前・自己完結)型のエコシステムを形成し、ユーザーに『保険+医療サービス』をワンストップで享受して貰える上質な体験を提供している」と誇らしげに語られている。
 ここで衆安保険の「健康エコシステム」について掘り下げる。
 衆安保険の健康エコシステムは「尊享e生」という主力健康保険商品への加入を入口に「オンライン問診」や「慢性疾患管理」、「医薬品デリバリー」といった高い頻度で使用される医療サービスの提供を通じて契約者のエンゲージメント(親和性)や継続率を増大・伸長させることを目的としている。

衆安健康エコシステム

 ポイントは「高頻業務(高い頻度で使用されるサービス)」の拡充に注力をしている点で、この実現の為に衆安保険は「オンライン病院」を設立し、自前での医療サービスを可能としている。
オンライン病院を自前で持つことは相応のコストがかかるが、これにより従来のビジネスモデルでは「入院の保障」までで終わってしまっていた契約者との関係をその前後の「診断・予防・管理・処方」といった長く深い関係に持ち込むことが出来、契約者のエンゲージメント・継続率に対するポジティブな効果を見込むことが出来るということだ。
(衆安保険は2019年7月にオンライン病院の開設免許を取得、以降具体的な機能・サービス内容についてオフィシャルに語られたのは今回が初めて)

  主力健康保険商品の「尊享e生」自体にも工夫が凝らされている。
「尊享e生」は年間100-300元程度の低額の保険料(100元は約1,500円)で重大疾病罹患時に治療費(1-数百万元単位)を実損填補で給付する一年定期保険で、こうした保険はその保障額と機能から「百万医療」というネーミングのカテゴリーを確立している。
「尊享e生」は百万医療保険の走りとして有名だが、その先駆者としての立場に甘んじることなく、計16回のバージョンアップを実施しており、最新版の「尊享e生门急诊版」で契約期間中の顧客が衆安のオンライン病院による診療が受けられるといったサービスを付加している。

(以下②に続く)



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