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朝井リョウ『何様』を読了

先日読んだ『何者』の続編と思い、引き続き『何様』も読んだ。

てっきり『何者』の就活で苦悩していた若者達が、就活後に新たな壁に打ち当たるストーリーを読めると思っていたが、こちらはどちらかというとサイドストーリーだった。

続きというよりは、登場人物の『何者』の話に至るまでの過去の話や全く別の人物の話の短編集だった。


私がまず惹きつけられたのが、『何様』というタイトル。

この言葉は、今まで幾度となく私自身が人から投げかけられた言葉だ。
何かと器用に物事をこなすので、気を抜くとすぐ他人を上から眺めてしまうのが私のとても悪いクセだ。


それはさておき、本書で印象的だったのが「ずっと正しく生きてきた人の話」。

グレることや人に反発することもなく、真っ当に人生を生きてきた主人公。
就活セミナーの講師として人気を博したが、すぐさま元ヤンの講師に人気講師の座を奪われる。

【ずっと正しく生きてきた人間よりも、過去に好き勝手やってきた人間の方が重宝されるなんておかしい】

趣旨としてはこんな感じだった。

これはなるほどと思った。
私自身は好き勝手やってきた方なので、正しく生きてきた人の気持ちはよく分からなかった。

小さい頃から問題児として扱われてきた者としては、圧倒的に正しく生きてきた人たちの方が優遇されていると感じていた。

プライベートではいざ知らず、社会では圧倒的に正しく生きてきた人間が持て囃される気がする。
好き勝手やってきて成功しているのは、ほんの一握りしかいない気がする。

やはり誰しも隣の芝は青く見えるんだろう。


もう一つ、人事部に配属された新入社員も印象深かった。

他人の人生を左右させてしまう採用担当というのは罪深い。
仕事の採用というのはキャリアだけではなく、人間が生きていくための生命線となる収入に影響するからだ。

だからこそ求職者には誠実に向き合って欲しいと私も思う。

noteで仕事に関する記事を書くこともあるせいか、私のホームにはキャリア関係の記事が多く並ぶ。

就活に苦悩する側の人の記事だけでなく、採用担当者側の記事にもたくさん目を通した。 


そこで私が感じるのは、【就活というのは「何者」でもない人間が、必至に自己アピールをする場】だということ。

そしてその人間を評価する採用担当者だって結局【「何者」でもないただの会社員】だということ。


キャリアの部門では、必ずと言っていいほど『元リクルート社員が語る』というようなコンテンツが溢れている。
『元リクルート』であることを主張する理由は一体なんなのか…

そう考えると、『元電通』『早慶大卒』というようなワードは世間に多く溢れている。

一体いつまでそこで働いていたのか…
何年働いてどんな実績を残したのか…
辞めてまで企業の名前を語るなら辞めなければよかったのでは…
大学卒業して何十年経つんだか…

とツッコミたくなる。

必ずしも全員がそうだとは言わないが、そういう肩書きをつけないとその人には何も残らないのかも知れない。

大谷翔平は大谷翔平だという事実以外に何の肩書きも必要ない。

結局は何者にもなれない人間は、虎の威を借る狐になるか小判鮫のように生きていくしかないのだろうと思う。
でも悲しいことに世の中の99%は何者でもない人間だ。

私も紛れもなく何者でもないただのクズ。

何者にもなれない中で、わずかでもグレードを上げるために難関資格を取ることに決めたわけだ。

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