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世間でいう優秀な人間はつまらない

脳科学者の中野信子さんと精神科医の和田秀樹さんの共著『頭のよさとは何か』を読んだ。

お2人とも東大を卒業された、超絶頭の良い人物だ。

そんなトップオブ頭の良い御二方が考える『頭のよさ』とは一体どういうことなのか、とても興味があったのでこの本を手に取った。

本当に頭のいい人たちというのは、とても話が分かりやすい。

私には難解な分野の専門家のお二人だけれども、この本はスラスラ読みやすく、共感することだらけで頭をブンブンふりながら読んだ。


なかでも興味深かったのが、

いつまでも東大卒と言われるのは、それ以上の実績がないと言われるようで複雑な気持ちになる。

元・偉い人になってはダメ。

という言葉。


日本は就職面接でもなんでも、卒業した大学、勤めていた企業名、受賞歴など、その人自身というよりも過去の実績や肩書きでしか判断してくれない。

しかしそれは全て過去の話だ。

就職面接なんて、特にこれからどれだけ実績を生んでくれるかが重要なのにも関わらず、本人の可能性を見ようとしない。

面接官が見るのは、過去の栄光に加えて、従順で使いやすい人間かどうかだ。

口先では「新しい人の意見を取り入れたい」だとか「自主性のある人が欲しい」なんて物分かりの良さそうで、風通しの良い職場かのようなフリをしながら、実際は悪しき習慣をぶっ壊し、良い方向に導いてくれそうな勢いのある反骨精神をもつ人間は門前払いする。

万が一そんな人間をいれてしまおうものなら、なんとしてでも辞職に追い込む。

みんな自分の存在を脅かすような優秀な人間に、そばにいてもらっちゃ困るらしい。



和田先生も中野先生も、どれだけ受験生のときに優秀であっても東大に入学後に勉強しなかったら誰だって頭が悪くなると著書の中で言っている。


中でも面白かったのが、ど根性勉強スタイルで有名かつ東大合格者率が高いという予備校の卒業生のなかには、その後活躍している人はいないという。

東大に入ったことが人生での頂点であり、その後は下降していく人は意外と多いらしい。

みんな、金太郎飴のごとく扱いやすい優等生に加工されつまらない従順な人間になっていく。


しかし本当に頭がいいというのは、社会の型にはめられることではないし、ただの物知りではない。

学んだことを自分なりにアレンジし、さらに新しいものを生み出す応用力に長けた人。
つまりちゃんと自分の頭で考えられることのできる人だ。

だから先生や上司に言われたことを素直に聞くような人間ではない。

日本はそういう人材を見つけるとことごとく足を引っ張ってきた。

その代償として、現在深刻な人手不足が起きている。


本書で大きく共感したフレーズが以下だ。

この国でいちばん問題なのは企業の経営者たちに人を雇うことに対する本当の意味での責任感がないこと

本当の頭のよさとは何か

企業は従業員から自由を奪うことに必死になり過ぎて、広い視野でものを考えることをしない。

従業員も経済を回す一人であり、消費者だ。


面接や取引先で印象の悪かった企業の製品なんて絶対買わないし、お客様満足も従業員の幸せも考えてない企業の製品なんて買わない。


そろそろいい加減、経営者たちは頭を働かせよう。

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