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『この世にたやすい仕事はない』読了

著・津村記久子

図書館で何か面白い本がないかとディグっていたときに目に入って来たこのタイトル。

いやー、その通り。

どんだけラクだと言われるような仕事でもそれなりの苦痛があるよなぁ。


なんて思いながら手に取った。


表紙を開くと帯を貼ってくれていた。

あなたにぴったりな仕事があります
やりがいのある、好きな仕事に裏切られたから、やりたい仕事より、できる仕事からやってみる。
いつか、自分にふさわしい仕事を見つけるために。

『この世にたやすい仕事はない』津村記久子  帯より


グッと来た。


小学生の頃からなりたかった職業に無事就いて10数年続けたものの紆余曲折あり、突然興味を失くした私。

そう、完全に燃え尽きた。


この小説はそんな私と同じく長年続けた仕事に疲れ、燃え尽き症候群っぽくなった30代半ばの女性が次の居場所を求めて短期間で仕事を転々とするストーリーだ。

しかもその職種はどれもとてもニッチでシュール。

監視カメラで作家を見張るおしごと

バスで流す「町の商業施設の広告アナウンス」の原稿を書くおしごと

おかきの袋裏に掲載するコンテンツ用原稿を企画制作するおしごと

ポスターを貼るおしごと

森林公園の小屋で雑用をするおしごと

以上の全5種だ。


どれも燃え尽きた後に働くにはちょうど良さそうな内容だ。

これらは適度にドライに割り切ればゆるくていいが、主人公は妙にどの仕事にも力を入れてしまい疲れてしまう傾向にある。

これは私も同じだ。

これまで大好きだった仕事をがむしゃらにやって来たからこそ、ゆるく適度にやることが出来ないのかも知れない。

さらに「今までの仕事に代わるもの」となるとしっくりくるものを見つけるのはそう簡単じゃない。
それ故に転職を繰り返してしまうこともめちゃくちゃ共感した。

加えて時と共に年齢も重なるので、選択肢がどんどんなくなる。

だから私は今無職状態が続いている。

ここで適度に手を打って「それなりに働ける仕事」に就くしかないと思うものの、人生はこれからもまだまだ続く。

今は定年以降も働かないと生活できなくなって来ているのにも関わらず、転職の賞味期限は35歳までだったりする。

社会人経験10年そこそこ程度で一生続けられる仕事なんて決められやしない。

企業側はやたら若い子を欲しがる傾向にあるけど、能力はあっても年齢だけで弾かれている優秀(かも知れない)人材が溢れていることに目を向けられないんだろうか。

若い人が欲しいのに、優秀な人材だ、即戦力だ、なんて冗談も大概にしてほしい。

そんな今の企業の欲しがる人材条件の矛盾は、「清純派AV女優ってくらいの矛盾」というネットの書き込みを見てめちゃくちゃ共感した。




話はだいぶ逸れてしまった。

この小説はとてもゆるい。

テレ東でドラマ化したら良いなっていうレベルにシュールでゆるい。


その際は是非、伊藤沙莉に主演をして欲しい。

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