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ハヤシサンへの異常な愛情


あ、ハヤシサンの話してもいいですか?


ハヤシサンっていうのは私のイマジナリー・ボーイフレンドのことです。

イマジナリーですが、実在する3次元の男性です。
4年近くお世話になっている美容師さんです。
2ヶ月に1度ヘアカットに行くのが私にとっての「ハヤシサンとのデート」なんですけど、あっ待ってキモいなって思ったと思うんですけどもうちょっと読んでいってください、これからもっとキモくなりますので。ここで私のヤバさにつまづいてたらこの後の話が全く進まなくなるので一旦受け入れて読んでください。

で、そのイマジナリー・ボーイフレンドであるところのハヤシサンがね、3月にそれまで勤めている美容室を退職して独立開業するってことは知ってたんですよ。
ちゃんとご本人に教えていただいたんですよね。

最後にカットに行ったのが今年の2月で、

「4月中にオープン予定なんすけど、また色々決まったら連絡しますね」

って別れ際に言われて、
やった!行っていいんだ!追いかけてくるなって思われてなくてよかった〜!って静かに興奮してたんですが、

その後ビビるほど音沙汰なくてね!

でもその間、ご存知の通りコロナクライシスもありましたし、なんだかんだ開業に手間取ってるのかな?とか、開業するにはしたけど、今は積極的に誘客する時でもないと連絡を控えていらっしゃるのかな?とか、色々前向きに考えて過ごしてたんだけど、
そうこうしているうちに4か月も経って、流石にわたしの髪もボサボサになってきたし前髪は伸びるし白髪も染めたいし、

意を決してお名前でインスタ検索してみたら


ふつーーーーーーーに


ふつーーーーーーーーーーーーに開業してました!!!!! 


開業してましたね!!!!



うわーハヤシサンおめでとうございますーーっ!!!


おめでとう!!!うん!! 


うん。

つまりこれはそうか。


「来るな」ということか。 


「いやちょっともう、僕の店、若い子向けのアレなんで。
キモいストーキング子持ちババアが白髪染めに来る、とかって感じじゃないんすよね」


ということか。


そうかー!

うわー絶対私から連絡できねー!!! 


って悩んだ2週間後くらいにDMしました。(したんか)


お店のサイトはホットペッパーしかなかったから、直接予約の方がありがたいかなって気を遣って(という体で)ハヤシサンのインスタ個人アカにDM。
最大限キモさを抑え、ごく普通の、これまでお世話になっていたイチ顧客としての立ち位置をわきまえた文章ですよ。

そしたら返事がさ、



「Shaniさんこんにちは!
ご予約ありがとうございます!」 



いやめっっっちゃふつーーーーーだなーーーーーー!!!!



「ご無沙汰です」とか「連絡してなくてすみません」とか「コロナ大変でしたねお元気でしたか?」とか全然ないなーーーーーー!

すごいなーーーーー!!

逆にもうハヤシサンすごいなーーー!!!

ぜんっぜん私に興味ないんだろうなーー!

いや異性としてじゃないよもちろん!
もう客として全然興味ないよなーーー!

あー好きー!
ハヤシサン大好きー!


と、精神をズタボロにやられてもはや自分が何のために生きてるのか分からない状態で美容室行ってきました。



お疲れ様でした、ここからが本題です。


新しいお店はとびきりおしゃれでした。

ガレージ風のスケルトンな店内。
モノトーンでまとめたインテリアに、効果的に配置されたグリーンの数々...。

ご友人3人で一緒に独立されたのですが、まだ開業まもないということでアシスタントはおらず、スタッフは創業者の3名のみ。
きっと現状は、3名それぞれが前職から引き継いで引き続き自担とされているお客様がメイン顧客なのではないでしょうか。

つまりね…

私は当然のことながらハヤシサンを指名したしね、アシさんもいないしね、最初から最後までずっと、ただハヤシサンひとりが私を相手してくれました。(号泣)

受付も、席への案内も、ドリンク運んでくるのも、シャンプーも、全部ハヤシサンひとりでやってくれました。(号泣)

前のお店では、当たり前だけど受付は知らんお姉さんだし、シャンプーは見習いの若手スタッフだし、カラーもハヤシサンが指示するだけで作業は他の子メインだったのね。

それが2時間ずっと、

ずっと片時も私のそばを…離れず…

私みたいなゴミムシのために…

髪の毛を綺麗にしてくれて…

(嗚咽)

どれほどDMで塩対応を受けても、それら全てが昇華してしまうほどの幸福を…

俺は手にしてしまったんやで…


でも、その間もずっと胸の奥がズキッと痛くて…


分かってもらえるかな?

あの、失恋する直前、みたいな。

もう彼の心は自分にはないって分かってるけど、それでももしかしたらまだ彼の中のどこかにちいさな愛が残されてるかもしれないっていう、僅かな期待をしてしまう愚かな感情。
(※注:そもそも恋は始まってもいないし愛も最初からないのですが、筆者はある種の錯乱状態にありますのでご了承下さい)


「Shaniさんのお店の方は最近どうですか?」

「また、前みたいにインナーカラー入れます?」


やめて、そうやって私の情報覚えている感チラつかせないで…

期待しちゃうから…

でもさ、そりゃまぁペラペラ喋らないのがハヤシサンの最大の良さなんだけど、

もうちょっと喋ってもええんちゃうの…

めっちゃ無言なんやけど...

私別に雑誌も読んでないしスマホも触ってないし...

そんなに私に興味ないかよ…


どっちなのよ…ねぇ...

もうこれ以上私に気を持たせるようなこと、しないで!(してません)


私、つらいよ!!
こんな思いするなら、初めから恋なんてしなければよかったよ!!!

 

という感じで感情乱高下、悲しきピエロの一人芝居を脳内で繰り広げる2時間を終え、肝心の髪の仕上がりのことは正直よく覚えていない...



...わけがないよ〜〜〜〜!!!

もう〜〜〜!そこがハヤシサンのすごいところなの〜〜〜!!!!

今回も最高にしてくれたんだよーーインナーカラーかわいーめっちゃいい色〜〜〜〜だから好きーマジでハヤシサンに一生切ってもらうーーーー信頼オブ信頼!! 

という大満足の仕上がりに...

マジで彼のテクニックが凄すぎて、一生離れられない身体にされてるの...

(今日の文章ずっとキモいけど、仮に↑この一文をハヤシサンに読まれる日が来たら覚悟決めて死のうと思います)


そして最後に写真を撮影していただきました。

あのですね、ハヤシサンのことが好きすぎて、毎回美容室行くたびに写真撮ろうかどうかめっちゃ悩んでるんですね。

何度もスマホ構えて

「今だったらわりと自然にSNS上げる用に〜的な感じで撮れるんじゃない?」
「でも、なんで俺のことフレームインしてんのって思われる?一言断る?いや、そしたらハヤシサン目当てって思われちゃう!(注:ハヤシサン目当てです)」

という無駄な葛藤を繰り広げては用もなくLINEとかチェックしてまたスッてスマホ置いて...ていうの延々と繰り返してきたんですよね。

その葛藤になんとか打ち克つことができるのが4回に1回くらいしかないから、結果半年に1枚しかハヤシサンの写真撮れないの。
その貴重な1枚を何度ピンチインしたか、皆様にはお分かりいただけないことかと思います。


でも今日はハヤシサン独立開業して初めての来店!


「あ、写真撮ってもいいですか?」(脳内シミュレーション)


全然自然!超自然!いや〜撮る撮る!撮るよね!だって独立したもん!新しいお店だもん!全っ然撮るよね普通〜〜〜!

よし、言うぞ!


「あ、写真撮って"もらっても"いいですか?」


思わず口をついて出たこの決定的なキモい一言。分かりますかこれ。


「写真撮ってもいいですか」

じゃなく

「撮ってもらってもいいですか」。


「あっ違うんです、別にハヤシサンを撮りたいとかじゃなくってーあくまでほら、自分の髪の仕上がり撮影したいだけなんですよーっ!綺麗にしてもらったし、記念に!!!自分の写真が!欲しいんですよ!ハヤシサンではなくて!!!!!」

という「他ならぬハヤシサンを撮りたい」自意識がとびきり発露してるキモいやつです。

「べっべつにお前のこととかどーとも思ってねーし!」

ってめっちゃチラッチラこっち見ながらわざわざ言ってくる男子のやつです。

かように、どこまでもキモい自分がどこまでも追いかけてきて、もはや魂が頭の上から半分飛び出して本体が虚無になりかかってる私に、ハヤシサン、

「どうやって撮ります?」

「えっと...じゃあこうやって後ろからの感じで...」

「俺も入ります?笑」

え?

正面の鏡に映る、背後でスマホを構えるハヤシサン、と、私。

ツーショット、

ツーショーット、

ツーーーーーーーショッッッットーーーーーーーー


「入る入る入る当然入って!!!むしろピースでツーショ!夢でした!!!!」

って言いたかったのに、魂が本体にちゃんと入っていない私はもうテンパりすぎて全然うまく返せなくて、会話噛み合わなくて、ハヤシサンの提案をスルーする感じになっちゃって、ハヤシサン単に写真に写りたがりの人みたいになってしまいました。何してんねん私。死んだら?

結局鏡に写り込んだ状態で撮影してくださったんやけど、構図も微妙だし私の表情も微妙、もう何したいか分からん。

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ちゃうねん!!!
もっとよくあるこう、よく美容師さんとお客さんが最後に撮るような、こう、並んでにっこり、みたいなのが良かったねん!!
これとちゃうねん!

でも最後、髪をそっと片手で持ち上げて写真撮ってくれたので私は昇天しました。

今後もまたずっと苦しい思いを抱えていくと思うけれど、ハヤシサンは私の髪の毛を片手でそっと持ち上げてくれた、そういう時間が確かにあの時存在したんだってことを、これからも胸に生きていきたいと思います。

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