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きみは夜行バスに揺られて


夜行バスはわたしの大好きなきみを連れていく
昼行バスで三日前に来たきみを連れていく

夜行バスはわたしを置いていく
見えなくなるまでわたしはそれを見つめている



夜行バスは流れていく
高速道路のオレンジのライトに沿って、
たくさんのトラックに押し流されて

置いていかれたわたしは
たばこを一本吸って、改札を通って
数分後にやってきた二両編成の白いボタンを押す



夜行バスは振り返る
何往復もしてきた道を
今日も何事もないようにと振り返る

わたしは振り返る
この数日を
この数日が永遠に続けばとカメラロールを遡る



朝になる
バスの中で中途半端に眠ったきみは、
くしゃくしゃの紙袋を提げて
ランドセルみたいに大きなリュックを背負って
帰路に着く

疲れた足で家まで辿り着き、シャワーを浴びて
ベッドの中で中途半端に眠れなくて
スマホを見たり、ゲームをしたり、また何かを考え
眠りにつく




夜行バスは出会いと別れを乗せて
今夜もだれかを攫っていく
わたしも一緒にバスに乗れたら
眠る前にわたしのことを考えてくれたら
わたしはそんな綿菓子みたいに甘ったるい夢をみる


これまでの四半世紀
わたしは何度も夜行バスに攫われて
誰かを見送ったり誰かに見送られたりしてきた

今日のことも
いつかとおい記憶になってしまうのだろう




夜行バスは希望と悲しみを乗せて
今日もハロゲンライトの灯りを頼りに








さみしくなって文字にして、そしたらすっきりして
次会える期待でわくわくしてきた
明日のことなんて分からないけれど、
八月も今日で最後なのでがんばるよ



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