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可愛い服を買いに行くための可愛い服が欲しい

可愛い服を買おう。

そう心に強く決めて足を運んだ。

ネットで何度もみた憧れの店。勇気と緊張を悟られないように、素知らぬ顔をしながら足を踏み入れた。


それなのに結局わたしは何も買わずに店を出た。


フリフリのブラウス、ハートいっぱいのスカート、リボンたっぷりのトートバッグ、これでもかと底を厚くしたシューズ。それらを身につけた可愛い店員さん、お客さん。


耐えられなかった。
分不相応な自分がその場にいることが。

お買い物するためにお気に入りの服を着て参戦した。それなのに、その場での自分は明らかに浮いていた。このままここに居ると、今見につけているお気に入りの服でさえも嫌になってしまう。
そう思って逃げるように店を出た。


悔しかった。
あの店に足を踏み入れるには武装が足りなかった。もっと、もっと武装で固めないと購入はおろか滞在すらもろくに出来なかった。

こんな武装で居るのが恥ずかしくて、でもお気に入りの服のことを「こんな武装」だなんて思ってしまう自分も嫌いで。


可愛い服を買いに行くには、可愛い服を身につけていないとダメなんだと知った。

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