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死を求める人びと~読書記録89~

1995年、オランダ人医師、ベルト・カイゼルによって書かれた書。
小説の形をとってはいるが、主人公の「私」は、作者であろう。

この本は久坂部先生の「日本人の死に時」を読んだ時に知り、興味を持った本である。寝る間もなくなるくらい話に引き込まれていく。

主人公は、オランダにある療養院の医師である。
その舞台における医師の葛藤が見事に描かれている。
オランダは世界で最初に安楽死が法で認められた国である。
私は、海外での安楽死やその他に関して詳しくなかったもので、簡単に安楽死が出来ると思っていた。
例えば、癌のステージで言えば、歩く事も出来て食事も自分で摂れる。あと数年は。。。などでも望めば簡単に出来るのだろう、などとか、医師は悩むこともないのだろうと思っていた。自分の無知と思いやりのなさに、申し訳ない。。。。
安楽死が合法であるとしても、なかなかのハードルであるし、死後、警察の事情聴取はあるのだ。
そして、医師の深い苦悩・・・・

療養院に入院する多くの患者の苦しみと死を前に多くの事を主人公は考え、それよりも、私たち読者に多くの提唱をする。

プラシーボ効果、民間療法、医師たちの思い上がり・・・。

死は誰も避けることは出来ない。
主人公がカトリック信者であるということからも、聖書の引用、葬儀の在り方、など。意味を持って描かれている。

墓地に行き、墓碑に書かれている言葉を見つめている主人公。その姿をイメージしている私がいた。


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